2年間で経済再活性化めざす
 緊急課題にどう取り組むか
    −産業の再生と治安問題−

             国務大臣・国家公安委員長 
               産業再生機構担当大臣  谷垣 禎一

 内外ニュース東京懇談会1月例会は15日、東京・キャピトル東急ホテルで行われ、国務大臣・国家公安委員長、産業再生機構担当大臣の谷垣禎一氏が「緊急課題にどう取り組むか」と題して講演した。この中で谷垣氏は産業再生問題について「企業レベルの過剰債務と特定産業分野における過剰供給構造の2つの問題が深刻化している。前者については、有効な経営資源を切り離して事業再生を講じる。後者については、企業の壁を超えた産業再編まで踏み込んだ措置を講じる」と述べた。さらに同氏は政府の基本姿勢について「スピード感、国際競争力、民間の英知を生かす、という3点をポイントにする」と強調した。(講演要旨次の通り)


 過去を振り返ってみると、(経済について)認識が少し遅れていたのかという感じがする。いつか地価が上がってくれば不良債権問題も解決する、という発想がなかったとはいえない。しかし、今は右肩下がりの時代になってきている。かつては、債務の力で事業を拡大するのが適合的であったが、今の時代には桎梏になっている。
 産業再生機構で取り組まなければならないのは、第一に個々の企業レベルの過剰債務問題だ。具体的には、優秀な技術力、労働力、開発力といった有効な経営資源を、過剰債務を抱える不良採算部門から切り離し、企業再生を講じて事業の力を発揮させていくことが必要だ。
 次に、過剰供給構造が生じている事業分野については、不良採算部門からの撤退あるいは縮小を、企業の壁を超えた事業再編、あるいは産業再編まで踏み込んで、過剰供給構造を是正しながら経営資源を新たな成長分野へ移行させる措置を講じること。この2つの作業が必要だと考えている。
 政府の取り組みの重要なポイントは3つだ。一つはスピード感である。日本や世界の経済が大きく変わっていく中で、企業、金融、事業の再生は時間をかけてやればよいというわけではない。第二は、その産業全体として国際競争力をどうつけていくかという視点がなければならない。第三に、産業再編を進める場合に、かつては官が介入していたが、現在は、市場に信頼される再生プランでなければ物事は進んでいかない。民間の英知を再生プランの中に生かしていくことが必要である。
 産業再生機構は、業務運営の基本指針、役員の選任などに関しては、一定の政府の関与を伴う株式会社とする。これは機構が、民間会社的な性格と特殊法人的な性格の両方を持っているからだ。また機構は預金保険機構の出資を得て設立する。そして、債権者間の利害調整が困難であるなど、民間だけでは解決が困難な、再生可能性のある案件に関して債権の集約化をする。そして、中立的な調整者として企業の再生を加速するための機関として位置づけている。
 また機構の活動を通じて、貸出債権市場の発展、企業再生ビジネスやそれに携わる人材の育成に寄与したい。機構の活動は、企業の単なる延命を図ることにつながらないようにすることが重要だ。機構の円滑な業務遂行と金融システムの健全性、安定性を確保していくために、金融当局、預金保険機構、整理回収機構とも密接な連携を図っていくことが大切だ。
 さらに可能な限り民間から人的、資金的支援もいただきたい。優秀な人材を確保するため、公務員的な給与体系ではうまくいかないかもしれない。機構の人員体系は市場の実情を踏まえ、株式会社の特性を生かした柔軟なものにしたい。
 メインバンクと企業間で再建策の合意ができ上がった段階で、われわれ産業再生機構に相談がかかるだろう。機構として、 「これはいけるな」と考えた時に、債権を適正な時価で、原則として非メインの金融機関から買い取る。そして機構とメインバンクで企業の債権の相当分を保有する。こういう形で債権の集約化を行って、企業のリストラあるいは経営再建を推進していきたい。機構が中立的な第三者として、交通整理あるいは産婆役としての役割を果たすことを期待されていると、私は考えている。
 再生計画の実施に当たっては、必要に応じて政府系金融機関の出・融資や、債務の株式化といった手法も活用する。最終的には保有債権、株式の譲渡も含めた最適な処分を行う。不良債権を集めて塩漬けにするという発想は、われわれはとらない。機構による債権買い取りは、政府方針どおり平成15、16年度の2年間に集中的に行う。機構の存続期間は原則5年、その間に処理する。機構の解散時に、ある程度の2次ロスも覚悟しなければならないが、国民負担は最小限にしたい。
 債権買い取りの適正化について、担保を総合的に判断するために、機構内に有識者による産業再生委員会(仮称)を設置することにしている。買い取り基準の設定は、その再生計画の終了時点、出口で生産性が上がっている、財務構造も改善していることが絶対に必要だ。具体的には自己資本利益率、いわゆるROEが、出口において2%以上向上していること。財務健全化の基準は、有利子負債のキャッシュフローに対する比率が10倍以内であること、といった基準を定めている。
 いま日本中に悲観色があふれているが、日本企業は潜在的に良いものをたくさん持っている。過剰な債務を抱える不採算部門を解き放てば、日本の有する有効資源が、自由にはばたいていくことは十分可能であると、私は考えている。
 一方、治安に関しては、昨年は交通事故の死者が大幅に減った。飲酒運転の取り締まりを強化したのが原因である。しかし、刑法犯の認知件数は近年どんどん増えている。欧米諸国との比較では、日本はまだ治安の良い国ではあるが、「水と安全はタダ」という認識では済まなくなった。
 問題は来日外国人犯罪の増加である。検挙率は高いが、凶悪化、組織化が進み、国民の不安は増している。日本人の少年犯罪、暴走族関連の事件も急増している。昨年度から3年間に、警察官1万人の増加を予定しており、工夫を重ねて犯罪を少なくしていきたい。

(週刊「世界と日本」1566号。講演録はじゅん刊「世界と日本」988号に掲載) 戻る