かじ取り間違えた経済政策
前自由民主党政務調査会長 亀井静香
内外ニユース東京懇談会2月例会は、19日、東京赤坂プリンスホテルで行われ、前自由民主党政務調査会長の亀井静香氏が「時局を語る」と題して講演した。この中で亀井氏は「9月の自民党総裁選で、小泉首相が再選されることは絶対にない」と強調。小泉内閣の経済政策について「かじ取りが間違っている。今やるべきことは中小企業・零細企業に対して、3年なり、5年なりの返済猶予を認めることだ」と力説した。さらに、9月総裁選で「きちっとしたことをやれる人が出ないのならば、私が総理の座に挑戦せざるをえない」と、総裁選出馬に意欲を示した。(講演要旨は次の通り)
日本経済はつるべ落としのような状況だ。中小企業をはじめ、会社がどんどんつぶれている。小泉首相は「強い企業が残って、強い日本経済をつくっていける。構造改革がうまく進行しているのだ」と判断している。しかし、現実の日本は大変な状況になっているから、小泉首相に対する国民の支持率は間違いなく下がっていくと思う。首相の政治手法に対して、多数の国会議員が支持していることは絶対にない。
永田町でも、もう本音を言ったって損はしない、という大きな流れが今後強くなっていくだろう。そういう中で、9月の自民党総裁選では小泉首相の再選はない。これは断言する。万一、解散をしても、選挙後に再び (小泉首相が)首班に指名される可能性はゼロ以下だ。
日本経済の立て直しは深刻な状況になってしまった。不良債権の直接処理を加速するという、この不景気の最中にやってはならないことを、竹中(金融財政担当)大臣が方針として出した。大反発があり手直しをしたけれども、金融機関は競って財務体質の強化を急ぎ、産業資金の供給という基本的な業務をしなくなっている。
今やるべきことは中小企業・零細企業について、3年なり、5年なりの返済猶予をすればいいと思う。小泉さんは「弱い木を伐採して、強い木だけを残す」と言うが、弱い木を伐採して、どんな新しい強い木が生まれてきているのか。何も生まれてきていない。枯れ山の上をハゲタカが乱舞しているのが、今の日本の状況だ。
小泉政治が行き詰まったのは、日本をどういう国にするのか、というグランドデザインを欠いたままで、改革という言葉だけが先走ってしまったからだ。日本人としての美しい魂、伝統、生活習慣、商売の仕方など、われわれの持っている共生の思想を捨て去って、アメリカ型の市場原理主義、競争社会を作ろうとしていたのだ、ということが今になってわかった。
国家の目的としては、物心ともに美しい国家をみんなの力を合わせてつくろう、ということでなければならない。その前提として、憲法、教育もきちっとしていく作業がなければならない。未来は子供たちに賭けるしかない。子供には先人の知恵、社会のルールを徹底的にたたき込む。人間としてやってはならないことをした場合は、体罰を加えてでも矯正していく。そういう情熱が教育には必要だ。
国家としての福祉ミニマムを明示しないままで、福祉政策をやってもだめだ。サラリーマンの負担を2割から3割にして、医師の取り分を減らすとは、改革でも何でもない。そうではなくて、生命、身体、健康を守ることについて、今の制度をどこでどう直さなければならないのか。盲腸で入院してつくづく思ったが、医療改革の基本は、医師の技術料をきっちりと評価することだ。
また、年金、介護の問題なども含めて、福祉の分野で思い切った改革をやらなければならない。財源は消費税を完全に福祉目的税にする。今の税制はわかりにくい。もっと簡素化したほうがいい。公務員制度も大胆に改革し、官民交流によって、課長段階、局長段階で中途採用をやっていけば、役人が実態と離れた行政をやらなくなる。
北朝鮮から日本に亡命を希望して、日本人学校へ逃げてきた人がいる。日本は難民として受け入れなければならないと思う。こういうことをためらっておれば、北朝鮮問題は解決しない。北朝鮮に対しては、日米だけでなく韓国、中国、ロシアが水も漏らさぬ共同歩調を取って、抜け駆けを許さない。訪米の際、アーミテージ国務副長官にも 「拉致問題を置き去りにしては困る」と強く言った。
イラクは北朝鮮と並んで、人類にとってきわめて危険な存在である。その危険をなくす方法は軍事力行使しかないのか。査察の強化を含めて徹底的な包囲網の中で、イラクを締め上げていくことの中で、なお危険性が除去できないという状況になれば、国際世論も、もうこれしかないな、ということになっていくと思う。
日本は自分の国を自前で守れないという現実がある。安保条約があるから日本有事の際は、アメリカがちゃんとやってくれるだろう、などと言っても、日本がアメリカとの間に強力な信頼関係を築いておかないかぎり、そんなものは紙切れ1枚も同然だ。イラクの問題は、日本が自前で国を守れるという努力をしなかった、その大きなツケを抱えながら対応しなければならない。
しかし、ノドンは迎撃ミサイルを配置すれば打ち落とせる。おカネは2兆円もかからない。残念ながらそういう努力すらしようとしない。日本は下手をすれば、米中の狭間の中で溶けてしまっていく。そういう瀬戸際になっている。
9月(自民党総裁選)まで、そんなに時間はない。小泉さん以外ならだれでもいいという人がいるが、そういうわけにはいかない。自民党の中には、党と内閣ががっちり力を合わせていける、という人材はたくさんいると思う。
しかし、きちっとしたことをやれる人が出ないのであれば、また、出てもそういう人ではだめだということであれば、私は総理の座に挑戦せざるをえないと思っている。
スローガンは「パフォーマンス政治よさようなら。本格政治よ今日は」である。
(週刊「世界と日本」1571号。講演録はじゅん刊「世界と日本」に掲載) 戻る |