一味清風                                    戻る

麻生政権で国交相に就任した中山成彬氏が、記者会見での発言「成田空港反対派のゴネ得」「日本は単一民族」「日教組糾弾」をマスコミから批判され辞任した。だが「日本は単一民族」は舌足らずな面もあるが、他の2点は中山氏のいう通りだ
▼成田は建設決定から15年以上もかけ、昭和53年福田内閣時代やっと開港に漕ぎつけた。当時、過激派が地元民を扇動し、社会党が一坪地主運動を主導するなど“ゴネ得”で空港整備が進まず、いま後発の周辺各国空港に水をあけられている
▼一坪地主だった社会党土井たか子氏が、記者団から「空港ができてもまさか成田から海外に出発しないでしょうね」といわれ、返答に窮していたのを思い出す
▼日教組の「国旗・国歌」「道徳教育」反対も有名。学校給食で生徒が「いただきます」というのは、給食費を払っているのだから必要ない−というあきれた父兄がでてくるなど日教組教育の歪みがいたるところに現れている。(清宮 龍)(週刊「世界と日本」平成20年11月10・17日合併号第1824号)
米国が北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除したことで、麻生首相が対米不満を表明した。指定解除を防げなかったとして、日本外交の努力不足を批判する声もある
▼しかし、元々のテロ支援国家指定には「拉致問題」は含まれていなかった。米国の協力があるなしにかかわらず、拉致被害者救出は日本の問題である
▼拉致問題解決への進展がなければ、経済制裁は緩めない。これは経済効果の問題以前に、国家意思の表明なのだ
▼北の核廃棄に向けての6カ国協議で、日本の孤立を懸念する声もある。その懸念は、戦後の追随外交の悪しき習性である。「バスに乗り遅れる」のではなく、「日本が乗らなければバスは動かない」のだ
▼麻生首相は休眠中だった拉致問題対策本部を稼動させた。北が約束した拉致被害者再調査委員会の即時設置を要求するとともに、朝鮮総連に対する“甘やかし政策”見直しなど、経済を超えた制裁強化を図るべきである。(澤 英武)(週刊「世界と日本」平成20年11月3日号第1823号)
米国の背信行動?
北朝鮮や拉致など外交面での話ではない。経済政策思想と原則の話だ
▼サブプライム問題を起点として世界的に波及した深刻な金融危機。ブッシュ政権は、日本円にして総額75兆円を用意し、危機回避、経済回復をしようと最後の手段に訴えた
▼政策の柱は経済不振に陥った金融危機の救済と市場への介入、監督強化。民間企業への公的資金注入は、過去ほとんど例をみない手段だが、あえてブッシュは踏み切った
▼これで米国が強調した自由市場経済の原則は歪まざるをえない。ただし、この政策で当面の金融不安、景気後退が阻止されるならブッシュへの批判は賞賛にとってかわる。政策評価は結果しだいだ
▼素直に喜べないのは嵐が過ぎ去った後、グローバルな自由市場経済と景気の行方に不安が残ること。とかく大国は二重標準を駆使することが多いが、今後米国は自由市場経済主義者として行動し続けるのか。(高野 邦彦)(週刊「世界と日本」平成20年10月20・27日合併号第1822号)
汚染米事件で不思議でならないのが、テレビ、新聞の報道の仕方。米粉加工業者と、そこから転売された酒造会社や菓子会社などの犯人探しには熱心だが、元の輸入米がどこから入ってきて、どう処理されたのか、一向に報じられていない
▼輸入先は中国、アメリカ、ベトナムなどといわれている。だが具体的な国名と、それぞれどのくらいの量が入ってきているのか?そのうち問題の汚染米はどの国のもので量はどれくらいか。当然、国の機関で品質検査が行われていなければならないが、どうだったのか
▼その結果、農薬やカビが検査されたら輸出国に送りかえすべきだ。国の担当機関はその辺の状況を国民にきちんと説明する義務がある。またマスコミは川下の個々の会社の犯人探しもさることながら、まず大本の国の機関の輸入受け入れの実状を調べ、責任の所在を明らかにする必要がある。メディアにこの自覚が足りないのでは…。(清宮 龍)(週刊「世界と日本」平成20年10月13日号第1821号)
北京五輪のどさくさに、ロシアが隣接する小国、グルジアに軍事侵攻。2地区を独立させ、そこにロシア軍を駐留させている。西側諸国は「ロシアの侵略」を非難するだけで手が出せない
▼冷戦終結後、東欧諸国に続いて旧ソ連のバルト3国までが、“敵方”のNATOに加盟、さらに旧ソ連のウクライナ、グルジア、アゼルバイジャン、モルドバもロシア離れしている。グルジア侵略は屈辱感にさいなまれたロシアによる“冷戦復活”覚悟の失地回復行動だ
▼中国も、その軍事力増強を梃子に、東アジア・西太平洋を勢力圏下に置こうとする野望を隠さない。背景には米国の相対的国力の後退がある
▼しかし、冷戦時代との決定的違いは、中露両国ともすでに世界経済に深く組み込まれていることだ。米国発の金融経済危機のあおりを受けて、両国の株式は大暴落、西側以上の経済脆弱性を示している。「モザイク冷戦」も一時の現象か。(澤 英武)(週刊「世界と日本」平成20年10月6日号第1820号)
減税や負担軽減は時空を問わず人々の自然の願い。増税が悪政の典型であるのと対称的。減税が人々を勇気づけ、活力を与える
▼といってすべての減税、際限なき減税が善であるわけではない。コストとのバランスが重要になる
▼政治家にとって減税政策は政権維持、奪取の強力な武器。同時にプラスもマイナスにも働くリスクの多い戦略だ。これが有効に使える環境、考え方、方法こそ、政治家の素質を判定・評価する手掛かりになる
▼現在の日本は、格差是正論の一環として主張される傾向がある。かつては、国際競争力強化の一環として是認された
▼コストと成果のバランスからみて、前向きの減税であって欲しい。巨額の財政赤字下の減税論がいまひとつ盛り上がらないのは、明るい展望が見い出せず、負担の圧迫感が消せないためだ。喜んで公のために負担をしたい、そんな心理に国民がなるのは、いつのことだろうか。(高野 邦彦)(週刊「世界と日本」平成20年9月22・29日合併号第1819号)
ロシアは南縁に隣接するアブハジア自治共和国、南オセチア自治州(いずれもグルジア領)から、グルジア人住民を追い出し、少数派だったアブハジア人、オセチア人を多数派とし、ロシア化政策を進めてきた。ロシア・グルジア戦争の背景には、こうしたロシアの戦略がある
▼グルジア軍の南オセチア進攻を待ち構えていたロシア軍は一気に反撃、グルジア領土を侵略し、占領を続けている。100万以上のロシア軍兵力に比べ、グルジアは人口440万人、総兵力1万人の小国だ
▼かつてチェコスロバキアからドイツ人居住地域を奪ったヒトラー、“プラハの春”を押し潰した40年前のソ連を彷彿させる、帝国主義行動だ
▼メドベジェフ・ロシア新大統領はアブハジア、南オセチアの独立を承認。「冷戦」を受けて立つ、と開き直った。ならば、西側は独立宣言したチェチェン人の総意を尊重、ロシアからの独立を承認・支援すべきではないか。(澤 英武)(週刊「世界と日本」平成20年9月15日号第1818号)
このところ政治家が競うように著書を出版している
▼皮切りは安倍晋三前首相の『美しい国へ』だったと思うが、以後、麻生太郎『とてつもない日本』、中川秀直『官僚国家の崩壊』、武部勤『それでも改革はやまぬ』、岡田克也『政権交代・この国を変える』…と、大物達の出版が相次ぎ、最近では当選1、2回の議員達まで次々と本を出版している。私がもらったものだけでも十数冊ある
▼この現象をどうみたらいいのか。安倍氏や麻生氏の場合は明らかに総裁選を意識し、存在感を示そうという意図がうかがえた。また政治資金集めのいわゆる「励ます会」の引き出物代わり、さらには近づく総選挙をにらんで、選挙民へ政策面での識見をアピールしようとする狙いもあるようだ
▼ただ、この種の著書は本人の話をもとにゴーストライターがまとめたものが大部分。そこで文章はまあまあだが、残念ながら読んでいて胸にせまるものがほとんどない。(清宮 龍)(週刊「世界と日本」平成20年9月8日号第1817号)
台湾・王金平立法院院長が来日。日本の要人と会談したことで、尖閣諸島問題で一時緊張した日台関係は徐々に修復、友好的信頼関係に戻りつつある
▼馬英九総統のもつ反日イメージも知日から好日へと変わろうとしている。当初66%という指示を得ていた馬政権。1ヵ月後には徐々に低下、2ヵ月後には20ポイントも下がった。国民党にも不満と感じるものが増え、満足を上回った
▼興味深いのは、国内の主な政治家10人の評価ランキング。トップに民進党の蔡英文主席、2位王金平立法院院長、3位呉伯雄国民党主席と並び、馬総統は李登輝元総統より下の7位、前回調査からの低下が著しい(7月16日TVBS)
▼政権成立後の支持率低落は、日本を含め韓国・台湾でも同様の傾向があるが、何か、地域的文化的な要因が働いているのかもしれない
▼ともあれ、日台関係の強化発展は、双方にとって重要な課題だろう。(高野 邦彦)(週刊「世界と日本」平成20年9月1日号第1816号)
米国政府の地名委員会が、島根県の竹島を「帰属未定の係争地」に分類、発表したことで韓国が怒り狂い、直ちに巻き返した
▼ブッシュ大統領は韓国KBSテレビとの単独会見で、韓国は米国の友人だと述べて、竹島を元の韓国領に戻すよう、国務省に指示した。米韓議員外交協議会も再発防止の手段を講じることを決めた。韓国では首相自ら竹島に上陸、竹島近海で公開軍事演習まで行って、実効支配の駄目押しをした
▼これに対して、「固有の日本領土」を奪われた日本が、及び腰外交を続けている。ようやく教育指導要領解説書に初めて、竹島を日本領として教えよ、との記述を加えただけで、ソウルの日本大使は、外務省に呼び出されて抗議され、在日韓国大使は抗議帰国してしまった。攻守が逆になっている
▼問題は、米地名委員会がこれまで竹島を韓国領としてきたのに、日本政府が無策だったこと。日米同盟の絆は米韓同盟のそれより小さいのか。(澤 英武)(週刊「世界と日本」平成20年8月18・25日合併号第1815号)
早朝から深夜番組までテレビといえば何でも出たがる政治家が増えている。それも政治と全く関係ないバラエティーショーやお笑い番組、さらには食いものの番組まで、何でもいいといった感じだ
▼どうしてこんなに出たがるのか。テレビに出ると顔が売れ、選挙への効用が大きいからという。それにしても少々あさまし過ぎないだろうか
▼女性政治家の場合はもう一つ特徴がある。ほとんどが赤、緑といった原色か、白の上衣で出てくること。ついつい“キャバレーの女給じゃあるまいし”と思ってしまうが、本人達は目立ちたい一心なんだろう
▼だが、洞爺湖サミットで来日したメルケル独首相はじめブラウン英首相のセーラー夫人、ブッシュ米大統領のローラ夫人、ハーパー・カナダ首相のローリー夫人らは、落ち着いた色のスーツをエレガントに着こなしていた。彼女らと比べ、わが女性政治家をみていると、なんだか恥ずかしくなってくる。(清宮 龍)(週刊「世界と日本」平成20年8月11日第1814号)
世界16ヵ国の首脳が洞爺湖に結集した政治ショー、濃密な討議といわれる割には中身は希薄だった感がある
▼世界に向けた宣言もパンチ不足。最大課題といわれた地球温暖化問題。危機が声高に叫ばれたほどには対応は間延びしている。目標を40年先に設定したが、この時の首脳が40年先に責任を負えるとは思えない。それまでに各国や世界は予想外の変化に見舞われかねない。かりに「50%削減」が達成されたとして、温暖化は収束しているだろうか
▼あれだけの有力首脳が集まった。ならば現に世界を悩ませ各国を苦境に追い込んでいる、原油高が主因のスダグフレーションを制御する力強い政策を提示できたし、するべきではなかったか
▼一時的にグローバル化に逆行する政策でも、それで世界が救われるなら、高い評価を得られた。投機資金の暴走を抑えるのは困難な作業だろう。だが、中東諸国も巻き込んだ主要国の協調で実現できよう。(高野 邦彦)(週刊「世界と日本」平成20年8月4日第1813号)
洞爺湖サミットでの福田首相は、「2酸化炭素排出量半減」という42年先の“蜃気楼”を追い続けた。が、日本の存在感は今ひとつ
▼G8首脳が揃った席で、ロシアの新顔、メドベジェフ大統領を見据えて、不法占拠されている北方4島の返還を説いてほしかった。すでに16年前も前のG7サミット政治宣言で北方領土の返還をロシアに促しているのだ
▼また洞爺湖での日韓首脳会議で、文部科学省が中学校の学習指導要領の解説書に、韓国が不法占領中の竹島を「我が国固有の領土」と明記する方針を打ち出したことについて、李明博大統領は「深刻な憂慮」を伝え、福田首相は「韓国政府の立場について充分に分かっている」と答えた
▼韓国では堂々、独島(竹島の韓国表記)は韓国領として学校で教えている。福田首相には、「李大統領の発言は内政干渉だ」という認識すらない。日本国民は、「国家の尊厳」に関心の薄い首相を戴いているのか。(澤 英武)(週刊「世界と日本」平成20年7月28日第1812号)
小泉元首相が、最近国会議員同士で結婚した二人の披露宴で「ベッドの中ではねじれ現象もいいが、結婚生活では問責決議や審議拒否はしないように」と挨拶し笑わせたそうだ
▼昨今こういう調子で時と場所に関係なく、笑わせるだけのスピーチをする政治家が増えている。だが二人の門出に総理経験者として、また人生の先輩として少しは教訓めいたことも話してあげればよいのにと思う
▼かつての総理達は笑わせながらもなるほどと思わせる話をした。福田赳夫首相「いま“二人のために世界はあるの”という歌がはやっているが“世界のために二人はあるの”でやってほしい」
▼田中角栄首相「あなた方は恵まれた環境に育ってきたが人生恵まれた道だけではない。その証拠がここにいる」とロッキード事件で逆境にいる自分を指して笑わせ「夫婦で大切なのは相手が一番必要としているとき助けあうこと」と。総理大臣もずいぶん変わってしまった。(清宮 龍)(週刊「世界と日本」平成20年7月21日第1811号)
近ごろの政府の景況判断には不透明さ・自信のなさが目立つ
▼16日発表の6月月例報告は3ヵ月ぶりの下方修正を表明、回復からの後退を印象づけた。しかし「下方は横バイの範囲内」(太田経済財政担当相)と補足した。すでに経済がスタグフレーション(不況とインフレの共存)の入口にさしかかっている、とはまだはっきり認めていない
▼米国、EUさらに新興国などの物価は軒並みに上昇。日本だけが相対的に安定しているのは幸運だが、それも時間の問題。原油・食料品の異常高に耐えられそうにない。物価上昇か倒産かの瀬戸際だ
▼経済の活性化、成長力の確保というカケ声とは裏腹に、企業も家計も保守保身に傾いている。資産家は海外からの金融収益に期待し、企業は自己防衛策に走る。家計は医療と年金に関心を強め生活防衛を強める
▼この保守的雰囲気を転換するものは何だろうか。宇宙開発だけでは突破口に役不足だが。(高野 邦彦)(週刊「世界と日本」平成20年7月7・14日合併号第1810号)
中曽根康弘元首相から卆寿記念の句集をもらった。元首相は今でも内外の幅広い問題をメモなしで30〜40分立ったまま、とうとうと演説し、その元気さに皆を驚かせている
▼現在の政界を見渡してこれほど見識豊かで大局観、歴史観をもった人はほとんどいない。なぜ年齢で線を引きバッジをはずさせてしまったのかと残念に思う
▼ふりかえると元首相とは50年以上も政治家と政治ジャーナリストとして親密なつきあいをさせてもらった。句集を読んでいるとその間の数々の思い出が甦ってくる
▼一番多く出てくる句は都下、日の出山荘でよんだもの。“暮れてなお命の限り蝉しぐれ”、“白菊や政塵払ひ家に帰る”、レーガン米大統領を迎えての“賓客と歩む山荘秋深し”等々
▼山荘には私も数人の仲間と泊まりがけでよばれ楽しい酒をくみかわした。“龍ちゃん”と名前を染め抜いたユカタが用意されていたのには驚いた。心配りも意外と細やかだ。(清宮 龍)(週刊「世界と日本」平成20年7月1日号第1809号)
経済躍進を背景に、中国が海軍力を増強している。海南島に潜水艦地下基地を建設、新型戦略原潜を配備した。5月誕生した台湾の国民党政権を懐柔、併せて中東からのシーレーンを脅かす狙いだ
▼中国の戦略は東シナ海の海底資源をめぐる日中交渉の次元を超え、太平洋の勢力圏を米国と2分するところにある。米政府もこれに対抗して、攻撃型原潜を年2隻製造する追加予算を計上した
▼一方、石油・天然ガスの高騰を追い風に、ロシアも軍事超大国復活に乗り出した。隣国グルジア内にあって分離独立運動を行っているアブハジア地区にロシア軍を送り、これを支援。また、北方領土にも巨額なインフラ投資を行って、問答無用の返還拒否姿勢だ
▼それどころか、天然ガス・石油の太平洋での販売を足がかりに、米中各遂に割って入ろうとする。いずれも背景にあるのは軍事力誇示である
▼この現実のなかで、日本が生き延びる道はあるのか。(澤 英武)(週刊「世界と日本」平成20年6月23日号第1808号)
 5月21日、国民党馬英九氏が第12任中華民国(台湾)総統に就任した。演説の中で日本への言及がなく、日本への関心の薄さが気になったが、反日イメージを消そうとした努力は、うかがわれる。中台一体化が早まるのでは、と懸念した人々も一応はホッとしたようだ
▼しかし中台経済の緊密化がうたわれたことで、その真意について、なお論議が交わされるだろう。台湾はどこに向かうのか、日本の安全保障にとっても問題なだけに、当分関心の的になる
▼ただし注目すべき光景があった。馬総統の再三の要請で李登輝元総統が就任式に出席。選挙中から始まった李・馬の接触から、李登輝氏は馬政権の後見人的立場に立つ可能性が語られている。李人脈の人材が馬政権の主要ポストに就任していることから、李登輝元総統の影響力を無視できなくなりそうだ
▼であれば、新政権が日本無視とか無関心を続けられることはほとんど想像できない。(高野 邦彦)(週刊「世界と日本」平成20年6月9日号第1806号)
先般来日した中国の胡 錦濤国家主席は、訪日を前に北京で日本人記者と会見、好きな日本のテレビドラマとして、80年代に人気を博した「おしん」を挙げたという。「主人公が自ら励み、苦労の末創業した精神は深い印象を残してくれた」と語ったそうだ
▼そういえば天安門事件から間もない1984年9月、私は中国を訪れて当時の実力者の一人、王震国家副主席に会った。彼はこのとき「あなたの懇意な経済人に中国への投資をすすめてほしい」と語ったが、笑いながらこんなことも
▼「最近われわれ(党・国家中枢)の間で日本のテレビドラマ“おしん”が大人気でね。夕方になるとみんなソワソワし、“おしん”をみようと、まっすぐ家に帰るんですよ…」
▼その王震もだいぶん前に亡くなり、胡 錦濤は中国で“おしん”を知る最後の世代だろう。日中のいまの若い世代におしんの辛抱物語が理解されるだろうかー。(清宮 龍)(週刊「世界と日本」平成20年6月2日号第1805号)
 訪日した胡 錦濤中国主席は「パンダ貸与」で「北京五輪免罪符」を手に入れた。懸案の毒餃子事件、東シナ海ガス田、チベット問題は素通りだ
▼胡主席のえびす面も、10年前に来日した江沢民主席の天狗面も、隠された素顔は同じだろう。東シナ海どころか、太平洋を米中で折半しようとの野望すら隠してない
▼米国では11月の大統領選挙を前に、民主党2人の候補が泥仕合だが、どちらも日本は眼中にない。日本重視の共和党マケイン候補の勝利を願うのみだ
▼5月7日、ロシアで若いメドベジェフが大統領に就任、9日にはモスクワ・赤の広場で大々的な対独戦勝利軍事パレードが行われた。プーチン・メドベジェフ双頭政権も太平洋覇権争いに参入しようと虎視眈々
▼米中露3強による太平洋の覇権争いを目前に、当然4強の一角を占めるべき日本でありながら、政府は無為無策。日本丸は太平洋の荒波に飲まれ、沈没しかねない。(澤 英武)(週刊「世界と日本」平成20年5月26日号第1804号)
 米国のサブプライムローンと中国五輪。何の関係もなさそうだが“他人迷惑”という点で大変類似性がある
▼どちらも完全無欠というにはほど遠い商品であり行為というべきか。サブプライムローンはなお底知れない不安を外国や企業、個人に抱かせているし、五輪の聖火も満足に運ばれず、通過する国々は聖火歓迎どころか、厳重な護衛付き。無難に走り抜けて欲しいと願う
▼五輪は間もなく本番を迎えるが、果たして無事に終了できるか、そしてその後に深い傷を残さないか、懸念はつきない。サブプライムローンのほうは、数ヵ月後には全貌が明らかになり、金融機関の損失確定後には、市場の安定より新しい活力が生まれ、経済全体を浮揚させる可能性が濃厚だ
▼中国の場合はチベットなどへの締め付けのさらなる強化。加えて食品監視の厳格化が部分的には進む。が、その国情からして政策効果は外国の期待どおりにはならず、今後も懸念の種か。(高野邦彦)(週刊「世界と日本」平成20年5月12日19日合併号第1803号)
在日中国人監督のドキュメンタリー映画「靖国」の試写を観た。靖国刀と刀匠とその作業場を軸に、靖国神社の戦争に寄与した役割を問うている
▼日本軍将校による「百人斬り競争」の新聞記事や、中国人斬首の場面など信憑性に疑問のある記事、写真をふんだんに並べ、日本の侵略性を意図的に浮かび上がらせている
▼撮影前の説明と違う、として刀匠が自分の出演個所の削除を求め、靖国神社側も撮影許可の範囲を破ったとして抗議している。許せないのはこの作品に文化庁が750万円もの助成金を出した“利敵行為”だ
▼一方、中国は300億円の巨額な資金を投じて、“南京大虐殺”映画を10本も欧米で作らせているという。虚構を現実として世界に定着させようとの戦略だ
▼日本の民間団体が募金活動をして、やっと4億円を集め、対抗映画「南京の真実」を製作した。しかし政府は知らん顔。上映してくれる常設映画館もない。(澤 英武)(週刊「世界と日本」平成20年5月5日第1802号)
揮発油税の暫定税率失効でガソリンの値下がりが始まる頃、テレビは朝から晩まで町のガソリンスタンドを映し出し“ここは何円安”“向こうはどうでしょう”“一般市民の声は”“店長さんは…”とやっていた
▼私はこれをみて昭和48年の石油ショック当時におこった、トイレットペーパーや洗剤騒ぎを思い出した。このときも新聞、テレビが“紙や洗剤がなくなる”といい出したのが騒ぎのきっかけだった。世論をあおって妙な方向に誘導するマスコミ体質は相変わらずだ
▼そした民主党は“減税だ”“勝った”“勝った”と浮かれているが、2兆6000億円という財源不足をどうするのか、対策は全く示していない。また、先進各国のガソリン価格はアメリカ、ロシアのリッター約100円を除くとフランス、イギリス、ドイツ、イタリアといずれも220〜250円前後で、値下げ前の日本の150円よりはるかに高い
▼価格に占める税率も日本は断然安い。こういう事実をきちんと報じ、国民に正しい判断材料を提供するのがマスコミの使命だろう。(清宮 龍)(週刊「世界と日本」平成20年4月28日1801号)
台湾の将来を決するといわれた総統選挙が激戦のうちに終った。野党国民党の圧勝、与党の大敗である。原因については様々な見方があるが、野党の政権奪取への強い意欲と行動が勝因。安定を望む国民が与党の急進的独立志向を敬遠したともみえる
▼次の課題は台中、日中関係がどう変わるかだ。当面、大変化は望めないが中台関係の密度が増すことは馬政権の主張から分かるが、注目したいのは選挙戦終盤から急速に強まりはじめた台湾人意識、より端的には台湾ナショナリズム。中国との安易な関係強化は国民から鋭く批判されるだろう
▼いったんは強化された国民党中心の連合も時間とともに希薄化、分裂へと進む公算もあるとの指摘もある。日中関係は民間中心のために、大きくは変化しないと予測されている。公的な関係も現在より深くなるとも思えない
▼陳政権に対して日米ともに、より強い支援姿勢を示さなかったことが敗因のひとつという指摘は正しい。日本はこの結果をうけて、安全保障問題により強い姿勢と体制を構築する必要に迫られる。(高野 邦彦)(週刊「世界と日本」平成20年4月14・21日合併1800号)
昨年の外交青書で、安倍・麻生政権が元気に打ち上げた日本外交の新戦略「自由と繁栄の弧」が、たった1年で棄てられようとしている。外務省がまとめた今年度版原案では、福田政権の中国・近隣諸国との協調外交に重点が移された
▼「自由と繁栄の弧」構想はNATO(北大西洋条約機構)からも、日本が責任ある大国としてようやく外交に踏み出した証として歓迎された。この戦略には全体主義の中国包囲網の合意があった
▼しかし、「相手の嫌がることはしない」親中福田政権は、毒入り餃子事件でも、チベット暴動に対する中国当局の武力鎮圧や外国報道機関の取材規制でも、中国批判を控えている。これで、胡錦涛主席の5月訪日を予定通り温かく歓迎でもしたら、チベット弾圧に免罪符を与えるものとして世界から冷笑されるだろう
▼胡主席の来日延期を通告してこそ、「物言う外交」であり、国民はそれを望んでいる。世界を覆う金融危機の最中、日銀総裁も決められず、経済大国日本は発言・主張の場を自ら縮めている。国際社会での存在感はどんどん矮小化してゆく。(澤 英武)
健康を回復し元気になった安倍前首相から最近きいた“いい話”を紹介する。多年教育問題と取り組んできた安倍さんは、先日、広島県尾道市の土堂小学校という学校に視察に行ったそうだ
▼この学校は全校生徒数29人になり廃校寸前だった。だが、いま同志社大の教授をしている先生が一時期校長になり、昔の小学校と同じことをやろうと父兄を説得、「早寝、早起き、朝ご飯」
▼10時には床に入り8時間寝る。そして朝ご飯をしっかり食べることを子供達に実行させた。同席していた尾道を選挙区とする亀井静香代議士が「家でもテレビはみせない、テレビゲームもダメ」と補足してくれた
▼そうしたら短時日のうちに子供達の学力、偏差値が上がり、全国テストでも抜きんでた成績をあげたという。このことを知った父兄達は、子供をこの学校へ入れようとしはじめ、いまでは生徒数が300人にもなっているという。パソコンもいち早く導入し、2年生が皆ブラインドタッチでやっているとか。先生の熱意と父兄の協力があればかなりのことができるのだ。(清宮 龍)(週刊「世界と日本」1798 4月1日号)
任期切れが迫っていたのに、容易に次期日銀総裁が決まらなかった。ねじれ国会のためである
▼両院の合意を必要とするこの人事、困ったことに3分の2決議も使えない。かなり以前から折衝があったようだが、野党の賛意を得られなかった。野党内の意見不統一も災いした
▼民主党の一部が主張する「財金分離」も一理あるが、日銀総裁に要請される条件は物価安定と中立性だ。見識があれば、旧大蔵省出身でも民間出身でも問題はない。2月末ようやく総裁・副総裁決定のルールが合意され、候補者の決意表明後、決定されることになった
▼問題なのは、国際金融市場が混乱し、世界不況が懸念されるこの時期にこそ、中央銀行総裁の見識と政策が求められているが、その重要な人事案件がスムーズに決まらず、宙に浮く状態は好ましくない
▼中央銀行が政府の政策の影響をこうむることは極力避けるべきだろう。それが中立性だが、時には政府と協調することはありうる。懸念されるのは、政党が人事を通じて日銀の政策に影響を及ぼすことだ。(高野 邦彦)(週刊「世界と日本」1797 3月17・24日合併号)
最近のマスコミ、とくに週刊誌、夕刊紙、テレビは、いったん標的を決めると執拗にバッシングをくりかえす。昨今の福田首相や朝青龍に対する非難、中傷はその典型例といえよう。しかもその道の専門家でもないタレントやマンガ家などにコメントさせ、それを仰々しく書きたてる
▼横綱審議会の女性委員は、“朝青龍には国技大相撲の横綱としての品格がない”といい続けている。朝青龍は高校のとき来日して相撲をとりはじめ、そのまま角界入りして横綱になった。4年近く一人横綱として相撲界を支えた功績も考えてやるべきだろう
▼それに茶髪のちぢれっ毛の彼女の風体は“国技の品格”を説くのにふさわしいかどうか。われわれの先輩から“人を非難する時はわが身に置きかえてしろ”と教わった。私が知る品格ある横綱は双葉山と大鵬ぐらいしかいない
▼福田政治を攻撃しているのもタレントやマンガ家が多い。この連中のコメントで福田政治を考えていいだろうか。強者に対する批判精神は必要だが、センセーショナルに書きたてて世論を誤らせてはならない。(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」1796 3月10日号)
毒入り餃子事件の余波が学校給食に及んでいる。農薬汚染の危険がある中国産食材の使用が判明したからだ。そこで国民の要望に応えて、食材の安全管理強化対策へと行政が動く
▼小さな政府を目指した小泉・安倍路線からの逆行である。かつて学校給食による集団中毒事件があって、衛生管理士の導入など衛生面での対策が強化された
▼学校給食を止めれば、そのための中央・地方行政職員と補助金の大幅削減になり、学校集団中毒事件はゼロとなる。教師も給食費不払い問題などから開放され、授業に専念できる。弁当の復活により家族の絆も強化されよう。しかし、母親は給食廃止に反対し、文科省も組織維持に傾く
▼加工食品には産地(できるかぎり)、添加物、製造日程度の表示だけで済む。消費・賞味期限の表記などは余計である
▼昔の人は臭いを嗅ぎ、舌で確かめていた。饐えた食物でも鼻と舌で、加熱して食べられるか棄てるかの判断ができた。今の消費者は数字頼り。「饐える」という実体も言葉も知らないだろう。五感のうち嗅覚・味覚を自ら退化させている。(澤 英武)

(週刊「世界と日本」1795 3月3日号)

世界的株価急落の中で、日本株は最大の下げを記録した
▼日本経済の健全性が強調されていたのに、この現象には世界中が注目し、政治も日本人もあ然とした。「慎重に見守る」というのが、いつもながらの政府・日銀の対応。米国ブッシュ政権の機敏さ、言葉をかえれば、ややろうばい気味の対応とは対照的だった。株価と市場の混迷が米国発だから当然だが、根底には米国の景気後退懸念に加えて、相対的経済力の低下が意識された
▼日本株急落は、日本売りとの見方が有力だが、必ずしも正しくない。外人売りが急激だったのは間違いないが、むしろ外資ファンドの損失穴埋めの結果とみる方が正しい。低位株を狙った外人買いがもどるのは時間の問題。むしろ難問は、日本人の意識にグローバリゼーションの現実とのギャップが生じていること
▼身の丈に合ったグローバリゼーションとは何かを、改めて考える必要がある。必要な改革とは身体を強く太らせるか、衣服を身体に適合させるかだが、どちらも少子化の中で相当に難しいことと知るべきだ。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」1793・4 2/18・25日合併号)
先の参議院選挙で野党民主党に惨敗した後遺症からか、衆議院では与党は3分の2を超える超安定勢力なのに、早期解散圧力の前に浮き足立っている
▼民主党の“大義”は直近の民意だという。しかし、民意には衆愚政治の落とし穴が待っている。衆議院議員の任期は来年秋までの4年間。憲法は、その任期を全うすることを想定している
▼戦後のドイツは基本法で、安易に連邦議会解散ができない仕組みを作っている。第1次世界大戦後のワイマール憲法で政権が頻繁に交代、ついにヒトラーの独裁を招いた教訓からだ。基本法では、連邦議会が首相不信任・罷免を議決するときは、後継首相の選出が伴わなければならない。首相が議会解散を行うには、自らの信任を問う動機が否決されるときに限られるが、その場合、議会が別の首相を選出すれば解散権は消滅する
▼1991年、ドイツ再統一が実現した裏に、コール首相の長期安定政権があった。日本では、議会が頻繁に解散、与党の都合で首相も交代する。世界の潮流から取り残され、対策も戦略も見えぬ惨状である。(澤 英武)

(週刊「世界と日本」1792 2/11日号)

世襲政治家がますます増えている。首相は橋本、小渕、(森=例外)小泉、安倍、福田と続き、議長も衆議院河野、参議院江田、首相候補も麻生、谷垣、高村、民主党も小沢代表、鳩山幹事長と世襲だ
▼降りかえると、太平洋戦争への流れをつくった陸軍の主要人物も、二代続いたドイツ派軍人だった。東条首相(陸軍大将)は武官としてドイツに駐在、父英教中将もドイツに留学している
▼日独伊三国同盟を推進した大島浩駐独大使も、父健一中将(大隈、寺内内閣で陸相)の方針で子供のときドイツ人家庭でドイツ語を学び、陸軍に入るとドイツ大使館武官、中将で退官後、大使となった。ナチスにのめり込み独ソ戦が始まると「ドイツは2〜3ヵ月で作戦終了、勝利間違いなし」と外務省に報告している。狭い視野でしか情勢をみられなかった
▼次元が違うがアメリカ大統領は、ジョージ・ブッシュ(4年)、ビル・クリントン(8年)、いまのブッシュ(8年)のあとクリントン女史がなると、24年間2つの家族が占めることになる。民主主義国家として頭をかしげたくなる。
(週刊「世界と日本」1791 2/4日号)
バブル崩壊を懸念した中国政府はついに金利引上げを含む一連の金融引締め政策を実施したようである
▼より格差の少ない社会を目指して、成長率を抑えるための正当な政策ではある。現地の日本企業を含む各企業も金詰まりを感じはじめているという
▼しかしこの政策、まともに実施できるかどうか。金融当局と企業、中央と地方、それぞれに様々な、いわば中国的な癒着関係が根絶されない限り、中央の政策はしり抜けになるだろう
▼さらに大きな問題は、大卒者を含めて厳しい就職難。大都市への求職者の流れは依然として続き「求職村」という存在まで生まれているらしい。大学進学者が急増したのは好ましいが、今やそれが就職難を助長し、農村からの民工、企業のリストラにより失業者と合流して新しい問題を発生させつつある
▼開発・建設は、余剰労働力吸収の一番の方策だが、これが金融引締め策と両立するのは大変に難しい。まして北京五輪、上海万博以後に発生する大失業者群がどうなるか。大卒者の動向とともに、大いに気にかかるところだ。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」12月17・24日合併号第1786号)
石油価格高騰のおかげで空前の好景気に沸くロシアは、今年から「クリル(千島)列島社会経済発展計画」を発動した。地熱発電、道路建設、港湾・空港整備と、数年前までは見捨てられ、ビザなし交流による日本の援助で生き延びてきた島がいま、活況の中にある
▼ロシアは北方四島を返すそぶりも見せない。対照的に、日本では北方領土面積2等分論など、妥協を模索する弱気論も台頭。北方四島返還運動の拠点、独立行政法人「北方領土問題対策協会」は人員削減、事務所も低家賃地域に移転を余儀なくされている
▼「国連の日」式典で韓国出身の事務総長公認の下で、竹島を韓国領「独島」、日本海を「東海」と表記した韓国紹介パンフレットが配られた
▼東シナ海経済水域をめぐる日中交渉でも、日本は、中間線の日本領域内での地下資源独自開発すら、中国の“軍事”圧力に及び腰である
▼不法にむしばまれている日本領土・権益に毅然として対応しない日本政府。隣国に領土を侵され、あきらめる国民はやがて国家を失うだろう−ドイツの法哲学者イエリングの言葉である。(澤 英武)
(週刊「世界と日本」12月10日第1785号)
“大連立”問題で自分の行動が党内で受けいれられないことがはっきりしたら、とたんに“辞めた”と党首の座を投げ出してしまった小沢一郎さん。一時期“私は変わらねばならぬ”といって期待と人気を集め、参議院選挙にも勝ったのに、結局変わっていなかったわけだ。しかも党幹部から慰留されるとあっさり辞任を撤回してしまった
▼一方、安倍晋三前首相も施政方針演説をしておきながら、代表質問を受けるその日になって、退陣表明をしたことは周知の通り。嫌気が差したら、さっさと投げ出す点は両者に共通している。二人とも“二世”“坊ちゃん”特有のわがままとねばりのなさをはっきり露呈した形だ
▼いま世襲議員がどんどん増え、自民党ではすでに3割に達している。その結果、石にかじりついても自分の政治信念に生きようとする、気骨ある政治家が急激に減り、小沢、安倍のようなトップクラスまで例外でなくなった。こうして政治は急激に活力を失いつつある。英国のように、子供は父と同一選挙区からは出られない制度にすべきだ。(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」12月3日第1784号)
527件。驚くべき数字だ。農水省が今年の9月までの食品会社による食品自主回収件数として発表したもの。なんと昨年1年間の2倍を越えている
▼幸い食中毒など大事故は少なかったし、食品関係企業数からみれば、さして大騒ぎすることはないのかもしれない。しかし中国原産食品や原材料への消費者の疑惑が高まり、偽装、不適当表示に敏感になっている現状からみて、食の安全への関心はかつてなく強く、いくつかの名門企業ですらそれによる大打撃で沈んでいる例も出現した
▼なぜこんなにも、偽装、不適当表示、つまりJAS法違反が横行しているのだろう。コスト削減による競争力の維持、強化が企業の最高戦略であり、利益増大が目標であるのは当然だとしても、そのために最も重大な目的が見失われてしまったようだ
▼そのひとつは企業経営者・幹部のリーガル・マインドの希薄化ないし喪失。しかもそれを異常な形で育て上げた「規制緩和」、そしてその背後に世界的風潮としてのグローバル化と自由化(開放)がある。規制緩和も程度問題である。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」11月26日第1783号)
アフガニスタンでの「テロとの戦い」に参加、インド洋上の給油活動を行ってきた海上自衛隊は、アフガン措置法の期限切れによって11月1日任務を終了した。国連の感謝決議、米英独など各国駐日大使の、給油活動継続要請を振り切っての撤退である
▼衆参ねじれ現象の中で、民主党が「アフガン特措法」を政局にした結果だ。国益にかかわる外交論争は水際まで、という国際常識は日本では通用しない。福田首相初の訪米では日本のインド洋撤退が負い目となる
▼ブッシュ大統領は、北朝鮮に対する「テロ支援国家」解除も視野に入れており、日本の重要条件「拉致」が置き去りにされかねない。民主党に「国益の良識」があれば、インド洋給油継続をテコに、逆に、テロ国家解除の案件に「拉致」を押し込む対米外交ができたのだ
▼一方、福田首相は靖国神社に参拝しない理由に「人の嫌がることはしない」と述べた。日本の嫌がることばかり言い募る中国に、なぜ同じことが言い返せないのか。沖縄集団自決と検定問題でもこの政権には原則に則らず、妥協でしのぐ姿勢が見える。(澤 英武)
(週刊「世界と日本」11月19日第1782号)
内外ニュース35周年夕食会で私は次のようにのべた。「以前学校の先生だった人から“雪の日の集会のあと長靴をはこうとしたら画鋲が投げこまれていた。相容れなかった日教組のいやがらせと思ったが強いショックを受けた。だが学校で『世界と日本』を読み、自分は間違っていなかったと自信を取り戻し勇気が湧いてきた”と打ち明けられたことがある。言論人として身の引きしまる思いをした」
▼この先生は、その後、武部勤自民党代議士(幹事長など歴任)の秘書となり長くつとめた棚川史彦さんで、先日50歳の若さで亡くなった
▼葬儀の日、武部さんは「棚川君は最後の夜、きていた2人の息子さんに“武部先生にきちんとご挨拶したか”といい、しばらくして酸素マスクをはずし、私に“十分仕事もしていないのに過分の給与をいただき有難うございます”と礼をいった」と思い出を語った
▼棚川さんは、そのあと間もなく息を引き取ったそうだ。荒廃した今の世に、こんな立派な人がいたことを知り深い感銘を受けた。(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」11月5・12日合併号1780・1781号)
中国の高度成長の持続性については様々な見方がある
▼肯定的な見方の中で面白いのは、語呂合わせだが、CHINAがあるから大丈夫だという。C=自動車、H=住宅、I=インフラ、N=自然環境保護、A=農業。いずれも当分は不足し、巨額の投資を呼び込む必要がある
▼これが内需の強さを示し、貿易に多少の変動やトラブルがあってもびくともしないという。ポスト五輪で多少の落ち込みがあっても、簡単に克服できる。中国の経済学者は一様に自信ありげだ
▼果たしてそうか。あの著しい格差は放置するのか。行政機構の末端で起こっているトラブルは拡大しないのか。中央の激しい権力闘争に火がつくことはないのか。地方の抵抗、暴動、汚職、弾圧は中国のお家芸
▼かつて中国に詳しい大家は「毛沢東時代の共産党政権は中国に破れるだろう。今日の政権といえども中国の伝統を克服することは容易ではない」と語った。どんなに成長し近代化しても、5000年来の文化を短時間で押し切ることは胡 錦濤政権でも困難ではないか。中国文化の根深さだ。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」10月29日号1779号)
安倍後継を争った福田・麻生両候補に、はっきり違いが見えたのが北朝鮮拉致問題への対応。福田氏は「対話」、麻生氏は「圧力」に比重を置いていた。しかし、価値観に共通の基盤がない独裁政権との間に「対話」や「誠意」が通じると信じるのは、“平和憲法”中毒者の通弊だ
▼独裁者相手の交渉では、脅しか損得の取引しかない。圧力には「軍事」が有効だが日本はそれを欠く。経済圧力は実施中だが、中国、韓国が効果を減殺している
▼一方、ソ連が崩壊した後、日本は経済協力をテコに、北方領土返還を求めてきた。しかしいま、石油・天然ガス価格高騰で望外の外貨収入を得ているロシアは、露骨な問答無用の態度だ
▼「軍事」も「経済」も効かないロシアに対し、もう一つ、「国際世論による包囲網構築」という圧力手段がある。北方4島を半世紀以上も軍事占領し続けているソ連に「侵略国家」のレッテルをはって、国際舞台で大々的にキャンペーンし続けることで、ロシアに負い目を感じさせる。さしあたって来年夏の洞爺湖サミットで試みる勇気を福田首相に望みたい。(澤 英武)
(週刊「世界と日本」10月15・22日合併号1778号)
アジア太平洋経済協力会議(APEC)が、形式的な会議から関係国にとって実質的で重要なものへと脱皮しつつあるようだ
▼9月のシドニー会議は、はじめて地球温暖化防止政策=エネルギー効率の向上=で合意したが、自由化推進でもWTOの行き詰まりを打開する姿勢を示した。会議を一過性のものとしないために事務局の設置も決めた。会議重視の表れだ。会議創設者のひとりとして日本は誇っていい
▼しかし問題もある。この会議をECのような経済統合実現のエンジンとするなら失敗するだろう。参加国の経済格差が大きく、価値観の共有部分も多くはない。安全保障面でも参加国の思惑にズレがある。首脳会議に台湾の総統が出席不能も不安定要因だ
▼難しい問題点のひとつは、この地域の大国、米中の対立と協調の影響だ。さらに極東開発に力を入れはじめたロシアが今後どこまで影響力を発揮するか。これら強国の影響力をどう調整できるか。日本の役割が問われるが、この地域での存在感が大きいか、小さくなるか日本の将来にとって重要になる。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」10月8日1777号)
安倍首相が突然辞任した。従来も首相が前触れなしに辞めた例はある。だが国会で所信表明演説をした直後に辞任した例はない
▼これで頭に浮かんだのは、戦前三度首相に選ばれながら嫌気がさすと、さっさと政権を投げ出した近衛首相である。華族の家系に生まれた近衛さんは、人と争うのを好まず執着心がないといわれた。戦後では先祖が熊本の殿様という細川護煕首相がスキャンダル報道であっさり辞任している
▼安倍さんは殿様の血筋ではないが、岸首相の孫という恵まれた環境の下、厳しい競争も体験せずに大学へ入り就職、父晋太郎氏(元首相)の死去で地盤、看板、カバンを受けつぎ三世政治家になった。政治家としてもトントン拍子、当選5回、51歳で首相になっている
▼こういう人は、いわゆる草の根政治家と違って“石にかじりついても”という精神が希薄だ。そこへいくと祖父の岸さんは戦前、命がけで東条内閣の閣僚を辞めている。戦後の岸内閣でも“岸を倒せ”の大合唱の中、耐えに耐えて安保改定を実現させた。安倍さんにこのド根性がほしかった。(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」10月1日1776号)
朝青龍の追っかけ報道ほど日本人を矮小化する現象はあるまい。外国人横綱の不品行への処罰−その程度のニュースなのに、テレビ、スポーツ紙などが天下の一大事のごとく騒ぎを拡大する
▼渦中の朝青龍がたまらず、故国モンゴルへ逃げ出すと、成田空港、機中、ウランバートル空港、はては、横綱の“謹慎先”にまで執拗に追いまわす。テレビではまるで集団いじめに映る
▼一方、安倍政権は、憲法改正と教育改革という戦後レジームからの脱却を掲げて戦った参議院選挙で惨敗した。争点は、年金問題や閣僚の相次ぐ失言といった目先の問題に集中した。選挙民もマスコミも、「木を見て森を見ない」
▼国際情勢は、日本外交の停滞を許さない緊迫した事態にあるというのに、この体たらくだ。松坂、松井、イチローといった、米大リーグで活躍する日本人野球選手のみを追う日本人ジャーナリストの大群もみぐるしい
▼世界第2位の経済大国民は、国際社会における自らの座標の自覚と、それにふさわしい品格が期待される。その答えは新渡戸稲造の著書「武士道」の中にある。(澤 英武)
(週刊「世界と日本」9月17・24日1774・5号)
選挙の際、各政党が擁立する候補者が、学識、政策や企業経営その他組織内での実績よりも、単なる知名度だけで選ばれる傾向が急速に強まっている。それも圧倒的に多いのがテレビを通じた知名度である
▼例えば参議院東京選挙区で当選した女性アナウンサーはテレビ出演で顔が知られており、安倍首相も首相官邸で公認証を手渡したほど熱のいれようだった。だが彼女には投票権がなかった
▼記者連中を引きつれて期日前投票に行き、はじめてそれがわかるというお粗末さ。昔の勤務地だった米国から帰国後4年間も住民登録をしていなかったのだ。当然のことながらこの間に行われた選挙では全く投票していなかったわけで、こんな人物を候補者にした自民党もどうかしているし、本人もこれが露見した段階で立候補を辞退すべきだった
▼他にも女性プロゴルファーの父親で、なにかといえばテレビに出ていたが、政策などきいたこともない人物が民主党から当選している。こんな連中が増えて行くと、議会制民主主義はどうなってしまうのだろうか。(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」9月10日1773号)
円高が進む中での緩やかな成長。原油など各種原料の値上がり。日銀念願の利上げ環境が整いつつあった
▼それが8月に入るや金融・証券市場の低迷が米国発で始まった。いわゆるサブプライムローン(低所得者向け住宅融資)のこげ付きが表面化、株価の同時全面安となった。さらに仏大手銀行BNPパリバの傘下ファンドの解約凍結・営業停止がきっかけとなって市場低迷、一段の世界的同時全面安となり、投資家のろうばい売りも起こった
▼米中央銀FBR、欧州中銀による断続的な大量資金の市場への投入があり、日銀も追随し、ほぼ10日ほどでとりあえず沈静化した。真夏のバブル崩壊劇だった
▼原因はヘッジファンドのブームが、サブプライムローンによって崩壊され、金融収縮も発生。これを主要各国の中央銀行による資金投入という協調体制で切り抜けつつある。おかげで円安は円高に反転、日銀も出鼻をくじかれた
▼これと同じ事態が北京五輪後に起こったら、主要国中銀の強調行為がとれるのか。これが中国リスクの本命のひとつだ。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」9月3日合併号1772号)
日本の参議院選挙を待って、米下院は7月30日、慰安婦問題に関する対日非難決議案を採択した。決議は、旧日本軍兵士の用に供した慰安婦制度を、若い女性を性的奴隷とした「20世紀最大の人身売買犯罪」と決め付け、日本政府に公式謝罪を求める内容だ
▼決議案の代表提案者、マイク・ホンダ議員のバックに在米の中国系反日団体があり、決議内容も事実からかけ離れた意図的歪曲、宣伝文書に近い。米国にとって、これはさまつな案件であり、日本は騒ぎ立てるに及ばない、との意見がある。しかし、中国、韓国、そして反日的日本人はこの決議を最大限利用すべく、てぐすねひいている
▼在米反日団体は、2年前の日本の国連安保理常任理事国入りに反対し、4200万人もの署名を集めた実績があり、中国との関係も深い。日本の国際イメージを落とすための長期情報戦略の一環を担っていると考えるべきだ
▼日本の政府、在米大使館は、決議に賛成した議員それぞれに事実誤認を正す努力をしながら、反日団体の次なる情報戦争の目標、「南京大虐殺」に備えるべきだ。(澤 英武)
(週刊「世界と日本」8月20・27日合併号1771号)
特派員時代から43年振りにモスクワを訪れた。この間フルシチョフからプーチンまでトップが7人代わり、共産国家が自由主義体制へと劇的変貌をとげた。貧しげで野暮ったかった人々の服装は、アメリカ人と見分けがつかぬほどカラフルで洗練されたものになっていた
▼天然ガスの埋蔵量世界一、石油生産もサウジを抜いて世界一というエネルギー資源のおかげで、経済は急速によくなりプーチンの人気もあがっている。若者はぜいたく言わねばほとんど職業につける。人気職種はエネルギー関連のビジネスマンか、給与のいい外資系企業という
▼クレムリンから赤の広場を隔てて全長240メートル余のドーム型屋根をもつ3階建てのグム百貨店がある。昔は買いたいものなど何もなかったがいまはカルティエ、エルメスなど世界中の有名ブランド店が軒をつらねている。ロシアはキンキラ金の成金国家になっていた
▼ただ空港でゲートに並ぶ客を待たせたまま、係員が平気で煙草を吸うなど国民の資質は変わってないようだ。バラ色の現状がどこまで続くか?(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」8月13日1770号)
米系投資ファンドによるブルドックソース社の全株買収(TOB)劇はブルドック側の巧妙な防衛策を東京地裁が認めたことで、一応の決着をみた。日本人経営者の多くはホッと胸をなで下ろしたことだろう
▼巨大資本にモノをいわせて市場を使っての買収(TOB)は、企業財務、株価押し上げ、合理化の手段として一種のブームを作り出した
▼とくに日本企業株の割安評価、円安もあり、外貨の絶好の標的だったのかもしれない。しかし今回の決定は、外資にもそして日本企業にも一つの教訓を示唆した
▼汗水垂らし育て上げた企業が簡単に乗っ取られるのを放置できないのが、従業員、株主を含めた日本的経営のあり方だったはず。それが制約の少ない「自由化」や開放論、あるいはグローバリゼーションの名の下に簡単に売買されるのは、日本だけではなく国際的な経営・経済倫理だと思う米国ですら、巨大ファンドの横暴に制約を加えるべきではという反省が最近聞こえる
▼企業は本来、新しい価値を創造するものだ。市場で誰にでも買い取れる商品とは次元が違う。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」8月6日1769号)
元外務省欧州局長だった東郷和彦氏が最近『北方領土交渉秘録』という本を出版した。同氏は入省以来、ほぼ一貫して日露外交、特に北方領土返還交渉にかかわってきた人物である
▼2000年前後にかけて、領土交渉が一つのピークを迎えていた時期の局長。外務省に影響力を強めていた鈴木宗男代議士の「風圧」を利用して、外務省内のごたごたを招いたとされる渦中の人物でもある
▼東郷氏はオランダ大使に転出した後、02年、不本意な退官を強いられた。東郷氏は国を離れ、部下の佐藤優氏は国際会議出張費捻出にかかわる背任容疑で逮捕された。東郷氏は「4年間の“亡命生活”」と称しているが不遜である。国際会議案件を承認したのが東郷局長であり、部下の逮捕を尻目に国外逃亡しただけのことだろう
▼戦後外交の最大懸案である北方4島返還交渉の“内幕”を、5年前まで交渉の中枢にいた外交官が「秘録」と銘打って出版する意図がいかがわしい。日本外交の弱点をさらけ出す利敵行為となる恐れがあるばかりか、その内容にしても、弁明と自己正当化が漂っている。(澤 英武)
(週刊「世界と日本」7月30日1768号)
北京オリンピックが間近に迫っている。実際に無事フィナーレとなるだろうか。懸念が日増しに募っている。威信をかけた中国政府のこと、関係者も協力し、何としてでもやり遂げるだろう。
▼しかし問題がなお山積しているのも事実。よく指摘されるようにポスト・オリンピックの後始末。カネとモノ(建設物)の処理を含め大変動は免れまい。まして中国元と株のバブル状態は、中国のみならず、世界に波及する
▼それだけではない。開催中に発生するトラブルも無視できない。まず中国人を含め観客、選手、関係者のマナーとホスピタリティ、大量に使用される食料・飲料・薬物の安全性、衛生状態、テロは問題外としても周辺地区の暴動、警戒は厳重だろうが、一般の生活文化は一朝にして変えられるものではない
▼何しろ、モグラタタキに似て一向に絶滅できない模造・偽物の天国。米国はじめ世界は中国製品を疑問視し、その流入品に規制を設けはじめた。世界一の外貨保有国になった中国の一挙手一投足は今後、環境問題とともにますます警戒すべきだ。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」7月9・16日合併号1766号)
李登輝台湾前総統が6月来日、念願の「奥の細道」を旅した後、兄上の祀られている靖国神社参拝も果たした。たまたま同じ時期、ドイツで行われた主要8カ国サミットに出席していた安倍首相は、胡錦涛中国主席と会談した。サミットに合わせて主要途上国首脳が招かれ、胡主席はその一人だった
▼昨年10月の安倍首相訪中で、中国は日中関係を未来志向へと路線転換した。今回の安倍・胡会談はその延長線上にあった
▼毎日新聞は「胡主席は『日本がこれまでの立場を順守して、具体的な政策と行動で体現することを望む』と強調した。台湾の李登輝前総統来日と靖国神社参拝への言及はながったが、日本の対応への不満を示したものとみられる」と報じた。何が何でも靖国批判に結び付けたい意図が見える。他紙も似たり寄ったりだ
▼安倍首相は、日本の歴代首相や政権実力者が「対中位負け外交」を強いられてきた流れを断ち切ろうとしている。ところが、日本のマスコミ自身は、依然として中国の鼻息をうかがい、忖度し、対中位負け報道から抜け出せていない。(澤 英武)
(週刊「世界と日本」7月2日号1765号)
故松岡農相とは、親しかったわけではないが彼は政治家、私は政治ジャーナリストだから一応の面識はあった。その彼が自殺する10日ぐらい前に、ある政治関係のパーティーで偶然会った
▼現職の大臣だから普通ならいろいろな人が挨拶したり話しかけるところだが、彼は大勢の出席者の中で一人ポツンと立っていた。淋しそうだったので「毎日大変ですね」と声をかけ、半ばリップサービスで「騒ぎが一段落したら農政や食糧問題で私と対談でもしませんか」といった
▼とたんに彼の顔がパッと変わった。これほど極端に人の顔が変わるのをみたことは今まで一度もなかった。「有難うございます。よろしくお願いします」と彼は嬉しそうにいって頭を下げた
▼その変わりように内心驚きながら「気の毒に孤独ななか一人悩んでいたのだろう」と思った。党や政府の思惑などもあり、彼は自分の一存では大臣を辞められなかったのでは…それができたら死なずにすんだかもしれない−あのときの彼の顔の急激な変化を思い出しながら、いまそんなことを考えている。(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」6月25日号1764号)
談合摘発の嵐が吹きまくっている
▼「談合」が罪悪であり、法律違反であることは、誰しも自覚している。しかしそれが根絶されず、日本は談合列島ではないかと疑われる。談合が日本の体質であるなら、それを積極的に評価する声があっても不思議ではない
▼「談合」の罪は、原理的には市場競争を阻害し、自由な価格形成をゆがめ、競争者を閉め出し、「市場の民主化」に制限を加える。結果的にコストのつり上げ、独占的利益の確保が固定化される
▼他方、談合には別のメリットがある。弱者を温存させ、業界ないし地域の秩序維持に貢献する。事業執行面での効率化に役立つ場合もある。強者による弱者への利益配分、関係者や参加者の事業継続も保証される。随意契約も談合まがいとして非難される場合もある
▼ビジネスルールとしてどこまで効率性、競争性を貫徹するか。あるいはどこまで同盟ないし仲間意識を許容するか。官の介入が認められるケースはないのか。もう一度、談合と独禁法との関連を日本の実情に合わせて検討すべきではないか。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」6月18日号1763号)
4月、エストニア政府は、首都タリンにあった“戦勝記念碑”を軍基地に移した。「ソ連軍がこの国を解放した」とする記念碑である。移設に抗議するロシア人との衝突で死者まで出し、モスクワではエストニア大使館がデモ隊によって封鎖された
▼ソ連崩壊で独立を回復したエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国にとり、ソ連は解放者どころか占領者だった。隣接するポーランドも同じ認識であり、目障りな“ソ連軍の解放記念碑”撤去の動きが起きている
▼プーチン政権のソビエト体制への急速回帰が、これら隣接諸国のソ連離れを加速させている。ベルリン、ウィーンなど敗戦国の地に無神経に建設した、ソ連軍の戦勝記念碑の運命も安泰とはいえない。英国に亡命した元ソ連秘密警察員暗殺事件もロシア当局の関与が濃厚で、英露関係を悪化されている
▼そんな折、5月下旬に天皇皇后両陛下がバルト3国を訪問された。直接の政治的意味合いはないが、バルト3国はご訪問を、価値観を共有する西側との連帯を深める契機として、政治的に受け止めるだろう。(澤 英武)
(週刊「世界と日本」6月11日号1762号)
外交で重要なのは情報を正確に把握し適切に対応することだろう。その点ロシアのエリツィン前大統領死去に伴う国葬への政府の対応はまずかった
▼各国からはクリントン前、ブッシュ元米大統領、メジャー前英首相、ケラー独大統領、韓国からも韓明淑前首相ら要人が多数参列した。だが日本は現地の斉藤大使を出席させただけ
▼この件に関連して思い出すのはケネディ米大統領が暗殺されたとき当時の黒金官房長官が私邸で、未明からステテコ姿のまま1本しかない電話を頼りに情報収集に当っていた姿。家がすぐ近くだったのでその様子を鮮明に覚えいてる。そして内閣は葬儀に池田首相の派遣を決めた
▼ケネディとエリツィンでは重要度が違うというかもしれない。しかし日本はロシアとの間に北方領土という多年の重要懸案を抱えており、しかもエリツィンはこの問題を含め日本に好意的だった。弔問外交という言葉があるように、葬儀は多面的外交の場として活用することもできる。首相周辺はもっと効果的対応を考えるべきだった。(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」6月4日号1761号)
円安基調の中で、円が不安定な動きをみせている。5月初旬には1ドル=120円を突破し、ユーロに対しても160円台を固めた模様である
▼為替レートは、様々の要因を市場がどう読むかで変動する。日本円の場合は、目下、金利安と景気回復の弱さから円安に振れる度合が大きいが、あまりに大きく円安に振れ、それが多少とも持続すると、円に対する信頼が低下する。市場がグローバル化しているだけに、他の主力市場との競合から円売りが加速されることも、しばしば起きる
▼日本の低金利がいま国際的な問題を発生させつつあることは要注意。ゼロ金利は脱したいが、いぜん利上げの気配はないために、低金利を活用し有利な金融資産投資にはげむ内外投資家が多い。ヘッジファンドやハゲタカファンドの跳梁の場となっている。金利が上げられない状況は金融日証券市場の根本的弱さか
▼ひとつの希望は円安が輸入物価と国内価格を押し上げ、日銀を勇気づけること。政府が日銀への圧力をかけないようになると、日本の市場も正常化しよう。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」5月28日号1760号)
アメリカで銃の乱射により32人の犠牲者が出た数日後、滞米生活20数年に及んだ友人からこんな話をきいた
▼あるときアメリカ人から夕食に招待された。招かれたのは7人で私以外は全部アメリカ人だった。たまたま話題が銃の問題になったら、一人が「私はどこへ行くのも大体ピストルを携行する。今日も持ってきた。よばれた人数がわかっていたので、人数分の弾をつめてきている」−といった。すると別の男が「自分はオフィスの部屋に帽子掛けをつくって、いつも帽子を掛けておく。その後に持ってきた銃をかけておくんだ」と
▼アメリカでは、こういうことがごく当たり前に行われているらしい。なにしろアメリカには、ほぼ人口に匹敵する2億2千万丁の銃が出まわっており、これは世界の銃の約3割に当たる。これにより毎年平均1万人以上が犠牲になる一方、自殺者も2万人近くいるという
▼しかし“銃があるからこそ殺りくを止めることができる”という主張が根強くあり、ブッシュ政権も規制には消極的のようだ。どうなるのだろうか。(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」5月21日号1759号)
中国の温家宝首相が微笑外交を振りまいて帰国した。首脳としては6年ぶりの訪日だ。その間、中国は争点になっている東シナ海中間線海底の天然ガス田の生産開始を発表し、日本の神経を逆撫でした
▼また、温首相は約束していた5日間の日程を勝手に3日に短縮、天皇陛下表敬の際、直接、北京五輪招待を持ち出す外交儀礼を失した無礼さ。しかし、日本は温首相に国会演説の場を提供し、省エネ、汚染除去技術の供与など、土産まで持たせた
▼安倍政権になって、中国は「靖国」に封印して首脳会談に応じ、中国包囲網とも解釈できる日本の「自由と繁栄の弧」外交にも異を唱えない。経済・社会の先行き不安、日中経済協力の冷え込み警戒からだろう
▼「日中関係は日本優位」との認識に立って、春の靖国神社例大祭に安倍首相の参拝があれば面白かった。中国は“激怒”するだろうが、もう日中首脳会談を拒否し続けることはないだろう。いつまで我慢できるか、下駄を預けて中国を悩ませる。これからもそんな機会はある。いまこそ「主張する安倍外交」の時である。(澤 英武)
(週刊「世界と日本」5月7・14日号1758号)
米国下院で審議中の「慰安婦決議案」が、安倍首相の訪米後、5月にも可決される見通しとなった。第2次世界大戦中、日本軍が女性を性的奴隷へと強制したことを、日本政府は公式に認め、謝罪せよ、だと。決議案は誤った事実と偏見に満ちた内容だ
▼提案者のマイク・ホンダ議員は日系3世ながら、日本糾弾に異常な執念を燃やす人物。しかもホンダ議員への政治献金の約3割が反日傾向の強い中国系団体幹部からだという。日本叩きの背後に、中国・韓国の後押しが見え隠れしている
▼ホンダ議員はすでに2001年、03年、06年と同様の慰安婦決議案を提出、いずれも日米関係重視の共和党議長の下で廃案となっている。ところが昨年の中間選挙で民主党が勝って、状況は一変。民主党議長は採択に前向きだ
▼韓国系団体も下院議員の部屋を回り、共同提案者への勧誘に精出している。しかし、在米日本大使館員が、下院議員一人ひとりを説得するなどして、汗をかいた形跡が見えない。こんな反日決議案が通ったら、駐米大使は辞表を出すほどの責任を感じてほしい。(澤 英武)
(週刊「世界と日本」4月23日号1756号)
テレビ局は、どうして個性に乏しく横並びになってしまうのだろう。長く続いたラーメン屋が店を閉めることになると、どの局も最後の日に大勢の行列ができている場面を写し出し、閉店を惜しむ客の声を紹介するだけ。それにどれだけの放送価値があるのだろうか。不祥事を起こし閉店していた不二家が再開されると、これも似たような場面と声ばかり
▼話が飛ぶが、くだらない星座占いを朝の大体同じ時間帯にどの局も放送している。根拠も示さず誰かが勝手に書いているとしか思えないくだらぬ占いを、競うように多年流し続けているテレビ局の神経を疑いたくなる
▼その一方、先日は産経新聞が“集団暴走に参加した少年らに日本テレビが撮影予定を事前に伝えていて、それが大規模な暴走事件を引きおこした”と伝えていた。政治、経済等多岐にわたる時事問題を、経験も見識もないタレントに司会させ、コメンテーターにも起用する定見のなさ。それに尻尾をふって出たがる政治家。日本のテレビはいよいよ救いようがなくなってきた。(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」4月16日号1755号)
現行法の制度の下では「代理出産」での母子関係は認められない。最高裁は米国女性に代理出産を依頼して生まれた双子について、日本人母の訴えを認めなかった
▼ただこの判決が必ずしもすっきりしなかったのは、現実の要請に対応できるルール作りを求めたことだ。いわゆる「借り腹」の現実はかなりあるのかもしれない。産まれる子の福祉にかかわる議論もあるらしい。生殖医術の観点からは、現実無視という批判もありそうだ
▼しかし常識は判決を当然と認め、代理出産に多少の疑問を持つのだろう。専門家には失礼かもしれないが、この「生殖医術」なるものにも、何かしらの疑念が残る。仮に人間の受精卵を動物に移植できたとして生まれた生物は、何と呼ぶことになるのだろうか
▼人間の実際の親子関係は、母子関係はまさしく社会と社会制度の根幹だ。そこには長い歴史と文化の結晶がある。日本と同様に代理出産を認めていない国は西欧主要国に多く、宗教的・歴史的伝統を色濃くもつ。現実的というだけで社会の根幹を揺るがしてはなるまい。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」4月9日号1754号)
何もかもアメリカがいいというわけではないが、“言論の自由”という点ではやはり先進国だな、と思ったことがある
▼それは京都で開催された京都賞授与式でのこと。この賞は京セラの稲盛和夫名誉会長が私財を投じて設立した、日本版ノーベル賞ともいうべき賞で、22回目の昨年は先端技術部門での米スタンフォード大学レナード・アーサー・ハーツェンバーク博士ほか2名が受賞した
▼そのとき博士は謝辞の中でこうのべた。「京都ときくと地球温暖化の不安がよぎる。この問題に対しあまりにも多くの政府、とくに私の祖国であるアメリカ政府はいまだに真剣に取り組むことを拒んでいる。一体いくつの氷河が溶ければ政治家達は目を覚ましてくれるのだろうか」
▼自国の政府に対しこれだけ毅然として、しかも公の場所で自分の信ずるところをいってのける博士の謝辞をききながら、日本の科学者だったらどうだろうか。政府に対する遠慮などもあって、ここまではとてもいえないのでは。アメリカはやはり言論の自由が生きている…と思った。(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」3月19・26合併号日1752号) 
大丸と松坂屋が経営統合し、日本一の百貨店が出現するらしい。百貨店に限らず、これからも統合・合併・買収を通じて規模拡大を目指す企業グループが誕生するだろう
▼狙いはさまざま。何よりも市場シェアの拡大であり、競争を勝ち抜く戦略あるいは生存の必要性に迫られた行為であるに違いない。ヘッヂファンドに狙われない防衛策であることもあろう
▼巨大企業が出現する一方で、市場から退場するものもいる。大禍なく選手交替が実現するのであれば極めて正常な姿だ。しかしこの風潮があまりに強まるとき、見逃せない問題が発生する
▼いくつかの留保はあるが、経済全体の成長を阻害する。加えていわゆる格差問題を厳しくするからだ。この風潮は、経済不況ないし停滞時か、外貨の攻勢時か、あるいは経済の好況時に加速される
▼現在は明らかに経済の低成長時代だ。しかも収益増大を追求する競争激化の時代。連続して経済が拡大していると報告されても、内実は厳しい選別が行われている。こんな時代の経済政策には細心の配慮が必要だ。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」3月12日1751号)
米国下院で“慰安婦強制連行”などを非難し、日本政府に謝罪を求める決議が採択されそうだ。昨年の春にも同趣旨の決議案が出されたが、議長(共和党)が取り上げなかった
▼しかし、中間選挙で共和党が敗北、民主党の議長に代わった。裏には在米韓国系のロビー活動があり、韓国メディアも支援してきた。採択阻止のため自民党の中山泰秀議員らが訪米する計画だが期待薄である
▼決議案のよりどころが、強制連行を認めたとされる平成5年の河野官房長官談話である。その後、日本政府・軍による強制性はなかったことが判明しているのにもかかわらず、談話の見直しは行われていない
▼1月、サンフランシスコで中国総領事館関係者らが出席して、南京事件の追悼行事が行われたが、会場はなんと日本人町の「日本文化センター」だった。同月、ユタ州で南京大虐殺映画が上映されたほか、中、米、加などで7本の同種映画が製作予定だという
▼「廬溝橋事件、南京大虐殺70年」の中国戦略の一環だろう。気になるのは、在米日本人大使館、領事館の動きが見えないことだ。(澤 英武)

(週刊「世界と日本」3月5日1750号)

今年の年賀状にこんなことを書いた。「日本人は“改革”のあとがどうなったか無関心なようだ。自宅への郵便配達は以前より2〜3時間遅れ、ひどいときは夕刊より後になる。勤め先でも1〜2時間遅くなった。北海道の知人が送ってくれた鮭も家人がたまたま不在だったら、持ち帰って暖房の入った郵便局の床の上に放り出したまま。民間宅配では考えられないことだ…」
▼年賀状をみた多くの人から「ウチも遅くなった」といわれた。日経によると今年は年賀状の配達も遅くなりだいぶ苦情がでたらしい。公社は“年賀状の投函が遅くなったため”と釈明しているそうだが年賀状そのものは減っているし、お年玉年賀はがきの販売枚数も6年間に4億枚減少している。公社のいい訳は体質が変わっていないことを示している
▼小泉改革の口火を切った道路公団民営化も、高速道路を走ってみて改善されたという実感はわかない。“禁止する”といっていた官僚の天下りは続いているし、年金の共済、厚生一元化も進んでいない。“改革”は国民への目眩ましだったのか−。(清宮 龍)

(週刊「世界と日本」2月26日1749号)

新年に入り、円安が著しく進み米ドル・ユーロなど主要通貨に対して独歩安の様相をみせた
▼理由はハッキリしている。日銀が金利引上げを躊躇していることだ。だがその背景には政府の圧力がちらついている。経済に対する認識はさして違わないのに、政策発動の契機となる指標の見方に微妙な差がある
▼この違いを対立と受け止めた市場が円安を演出している。原油高の勢いは止まり世界の好況は持続しているが、円の影が薄いのは、指導層の意見不一致のためか
▼それと対照的なのが中国元。巨額の外貨蓄積ゆえに元の切り上げが進み、ついに香港ドルを上回った。これが持続するかは要注意だが、両地域間の経済・資金は逆流しはじめることになる
▼元とともにより顕著な上昇を続けてきたのがユーロ。経済の好調さと、EUの拡大がその背景にあり、ついに旧共産圏国スベロニアまでユーロ圏に参加した。EUの実質的拡大と一体化は徐々に進み、米ドル一極の世界経済の中に占める地域も向上、ドルからユーロへのシフトも進む。では、円の行方は?(高野 邦彦)

(週刊「世界と日本」2月19日1748号)

2月7日は「北方領土の日」。この日を中心に全国で、北方領土返還を要求する都道府県民大会など関連行事が展開される
▼昨年12月、国会で行った麻生外務大臣発言が、「北方4島一括返還」を唱えてきたこれら国民運動に暗い影を落としている
▼大臣は野党の質問に、「北方4島を面積で測れば、歯舞群島、色丹島、国後島の3島に、択捉島の25%を加えると半々になる」と答えた。これが新聞で、等分案も視野に「解決策探る動き」などと報じられ、外務省は否定に躍起となった
▼しかし、覆水、盆に返らず。ロシアでも、日本は北方領土の部分返還まで譲歩するのか、との憶測が生まれている。麻生発言は軽率だった。しかし、外務省幹部の責任はより重い
▼最近、中露で国境河川の中洲を折半した例を引いて、北方領土の分割を主張する学者、訪ロして同様の提案をする議員が後を絶たない
▼外務省幹部は、北方領土の面積による分割質問があり得ることを想定して、「北方4島の返還で平和条約。数字遊びには乗らない」との外相答弁を用意しておくべきだった。(澤 英武)

(週刊「世界と日本」2月12日1747号)

お湯をかけるだけで食べられるチキンラーメンを開発し、世界中で年間857億食という巨大市場をつくった日清食品の創業会長安藤百福さんが96歳で亡くなった。戦後徒手空拳で業を起こし、独特の発想で世界的企業に育てあげた人達のうち、ソニーの盛田昭夫さん、ホンダの本田宗一郎さん、クロネコヤマトの小倉昌男さん達が次々と去り、安藤さんは最後の一人といってもいい存在だった
▼しかも亡くなる3日前にはゴルフをし、前日には会社の仕事はじめで約30分訓示、昼食はいつものように社員達とチキンラーメンを食べたという。素晴らしい一生だったと思う。安藤さん達に共通しているのは不眠不休で仕事に打ち込んだことであろう
▼前後して日本舞踊の人間国宝花柳寿楽さんも88歳で亡くなった。だいぶん前になるが「六代目菊五郎さんから文字通りひっぱたかれながら仕込まれた」と聞いたことがある。皆さん少々のことにはへこたれない精神力の持ち主だったのだ。楽をしていい思いをしたがる者が圧倒的に多くなった今の日本、どうなっていくのだろうか。(清宮 龍)
(週刊「世界と日本」2月5日1746号)
11月下旬、台北訪問時、台湾は政治の季節。与野党が激突し、訴訟合戦をくり広げていた
▼つい先頃、総統府前は3万人の真赤な反陳水扁デモ隊に埋めつくされたり、立法院での3回目の罷免案が否決されたばかり。政争と選挙の華やかさは台湾独特の政治文化。泥沼化した政争の行方に国民は固唾をのんで注目していた
▼間近に迫った台北・高雄の市長選挙。2008年の総統選に影響するだけに、民進、国民両党首脳は足しげく高雄に出向いている
▼陳政権は近親者ぐるみの訴訟問題で身動きできず、流れは野党優位とされ、馬英九国民党党首の次期総統は確実、という評価が定着したかに思われた
▼だが最近、馬氏の評価に陰りがみえはじめたという。陳総統と同じ機密費流用疑惑や指導力不足問題が浮上。勝敗不明の中で人々は「馬には友がなく王には敵がない」という話を流している。王とは本島人で国民党リーダーのひとり、王金平氏。国民党総統候補も不確定となりそう。やはり台湾アイデンティティーがギリギリのところで目覚めるのだろうか。(高野 邦彦)
(週刊「世界と日本」12月18・25日合併号1741号)
英国に亡命中の元ロシア秘密機関将校リトビネンコ氏暗殺事件は、英露関係を険悪なものにしている。このロシア内部事情を知りすぎた男は「すしバー」で何者かとの食事後に発症、3週間後に死亡した
▼遺体からは、核関連施設以外からは入手不可能とされる猛毒放射物質、ポロニウム210が検出され、店も放射能で汚染されていた
▼リトビネンコ氏は入院中、英国紙に、同氏を監視していたロシアの情報機関員の名を明かしており、ロシア秘密機関による犯行との疑いが濃厚となった
▼折あしく、EUとの首脳会議のためヘルシンキに滞在していたロシアのプーチン大統領は、記者会見で釈明を余儀なくされ、関与は否定したものの歯切れは悪い
▼ピストル1発で暗殺できるのに、なぜ前代未聞、危険な「放射能殺人」が編み出されたのか。もしロシアが関与していたとするなら、唯一の理由は、殺人手段の異常さが大きく報道され、ロシア体制批判者の恐怖心を煽ることにあるのだろう
▼プーチン大統領自身、秘密警察KGBの出身。旧体制への回帰が懸念されている。(澤 英武)
(週刊「世界と日本」12月11日1740号)
  京セラの稲盛和夫名誉会長が私財を投じて設立した稲盛財団主催の第22回京都賞授与式が過日、京都国際会議場で開催された。この賞は先端技術、基礎科学、思想芸術部門の発展に貢献した人に贈られるもので、今回は米スタンフォード大学のレナード・アーサー・ハーツェンバーク教授ら3人に、それぞれメダルと5000万円が贈られた
▼受賞者の中からはこれまでに5人がノーベル賞を授与されており、きわめて権威の高い賞である。だが、最近まで日本のマスコミではほとんど報じられなかった
▼今回も近年同種の世界文化賞を出しているサンケイが29面下段に写真入り3段で報じたが、そのすぐ上は、もっと大きな写真付きで「お菓子の時計」が3段扱い。ほかは日経が2段、朝日がベタ記事。読売、毎日はなし
▼ただ読売は、自社主催の正倉院展を高円宮妃が視察されたと写真入りで伝えている。同妃は京都賞にも出席されていた。だが、自社の催しものだと伝えるが、そうでないと無視してしまう。この偏狭な体質が日本のメディアの特徴の一つだ。(清宮 龍)

(週刊「世界と日本」12月4日1739号)

 規定通りなら、卒業資格のない高校卒業生が10万人近く発生するはずだった
▼不思議というか、不名誉というか、この事件、思春期の生徒に重大な影響を投げかけた。当面の措置として補習でほぼ全員が救済されるようだが、多くの問題点を浮上させた
▼まず高校当局のルール違反。校長が生徒の前で謝罪する姿は美しいものではない。学習指導要綱に問題はあるにせよ、それから大きく逸脱することは教育上もほめられたことではない。有名大学合格率で高校の評価がつけられる現実に押される学校側にも同情の余地はある
▼ともあれ戦後教育全般が見直されようという今日、高校のあり方も本格的に問い直されなくてはなるまい。カリキュラムの中で、日本史と社会倫理に関する学習時間が少ないのは問題だが、それを適切に指導できる教師の不足がもっと大問題だ
▼身と心を鍛える上で日本社会は、伝統的センスと技法を保持している。その上に新技術・新知識を習得できる素地をつくりあげるのが高校教育本来の役割。大学受験専門学校に陥らないことを望む。(高野 邦彦)

(週刊「世界と日本」11月27日1738号)

北朝鮮の地下核実験を受けて、自民党の中川政調会長が、正面から、日本も核兵器保有の是非が議論されてよい、と発言、麻生外相もこれに和した。かつて、インド、パキスタンが相次いで核実験を行ったとき、西村防衛政務次官は、同様の発言をしただけで、朝日新聞の批判を受け、辞任させられている
▼ところが、マスコミは核保有論議の功罪を論じこそすれ、発言自体を封じることはできなくなった。時代はすっかり変わった
▼「新憲法制定」は安倍新政権の公約である。朝日新聞は、憲法改正反対どころか、改正議論すらまかりならぬとしてきた。そして「日本はアメリカから与えられた憲法が変えられず、もがいている」と発言した法相がクビになった例もある。いま、護憲を唱えているのは共産、社民の少数政党のみとなった
▼言論封じは、共産主義政権、軍事政権など独裁体制の本質である。朝日新聞には権威主義の血が流れている。自らの路線に反対する意見を封じようとする発想は、言論の自由が保障されている社会にあって、独裁に通じる異質なものである。(澤 英武)

(週刊「世界と日本」11月20日1737号)
 安倍新首相は就任早々、懸念されていた対中、対韓外交を巧みにこなし国民をホッとさせた。そのために、タカ派のナショナリストと言われていた首相は思い切って舵を切りかえた
▼まず国会答弁で、太平洋戦争開戦の責任が祖父岸信介氏を含めた東条内閣にあることを認め、靖国神社への参拝は“あいまいにする”と述べた。首相はこれまで「安保改定で所信を貫いた祖父(岸氏)を尊敬する」と語ってきた。たしかに安保と取り組んだときの岸氏は信念の人だった。だが、鳩山内閣の日ソ交渉では態度があいまいで“両岸”と言われた
▼安倍首相は、どうやらこの両面のDNAを受けついでいるようだ。だから外交の第一関門を突破することができたのだと思う。外交は相手がある。自説に固執し一歩も譲らないというのでは交渉にならない。首相はこの辺のことを十分心得て、柔軟な姿勢を示しながら事前の根回しも怠らず、日中、日韓首脳会談を国益にそった線で実現させた。今後もこの調子で常に国益を考えつつ、強い意志で外交を推進してほしい。(清宮 龍)

(週刊「世界と日本」11月13日1736号)
 大田弘子・経済財政担当大臣初の月例経済報告(10月)が明らかにされた。前月同様「景気は回復」というものだった
▼何と57ヵ月連続の回復で、かつての“いざなぎ景気”を上回る安定的な上昇という
▼報告は過去の長期景気回復との異同に注目し、それが民間主導と改革の成果と述べる。しかし見方によっては多分にだらだら景気、まだら景気のほうが適切だ
▼本当の課題は報告でも触れてはいるが、深化しつつある二極化ないし「格差」だ。この処理と対応はかなり厄介で難しい。小泉流の改革を継承するのはやむをえないが、それが競争と効率化、グローバル化の一層の推進を目指すなら、新内閣を窮地に追い込む恐れがある。改革の中味を再検討する必要がありそうだ
▼今日の好況の要因のひとつは、大企業の好調。それも合併、提携など資本取引による部分も大きく、中小との格差、市場のゆがみをもたらしかねない。さらに利益分配率が、労働より資本に傾きかけている面もある
▼新経済チームがこの点の克服にさらなる知恵をしぼって欲しい。(高野 邦彦)

(週刊「世界と日本」11月6日1735号)
安倍新首相は10月8日、9日の連休に中国と韓国を訪問した。小泉首相時代に悪化した対中、対韓関係がどのように改善されるか、多くの日本人が注目していた
▼ところが韓国訪問の翌10日は新聞休刊日。しかも9日に北朝鮮核実験という大ニュースが飛び込んできた。それをきいて昔通信社で365日1日も休まずニュースを流し続けた頃の記憶が甦り、もし自分が新聞発行者だったら明日は絶対朝刊を出すところだが−と思った
▼テレビの映像と薄っぺらな解説では物足りず、実験の実態とさまざまな角度からの分析をじっくり読んで知りたい、と考えている人はたくさんいるはずだ。さて翌10日読売は、朝刊を発行し宅配も行った。大げさかもしれないが“記者魂”はまだ残っていたと嬉しかった
▼ただ、ほかの各紙は私が調べたところでは駅で号外を配布した程度で、きちんと読者のところに新聞を配達したところはなかったようだ。何がおこっても休みは休みと割り切り、それが当たり前と思う記者がふえているということだろうか。(清宮 龍)

(週刊「世界と日本」10月30日1734号)
ロシア政府は9月、突然、欧州・日本合弁の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」に事業停止を命令した。パイプライン敷設が環境を破壊するとの屁理屈だ
▼ソ連時代から、日本の資本と技術を投入してきた探査開発事業がようやく実り、本格操業という段になるや、これを横取りする魂胆か。「サハリン2」問題はロシアが国際契約を平然と無視する「ソ連に戻った」ことを示唆している
▼8月、北方領土水域で、ロシア国境警備隊が根室の日本漁船を襲い、漁民1人を射殺、船長を密漁と国境侵犯の罪で裁いた。北方領土を不法占拠しているロシアによる裁判は認められない、との日本政府の抗議もロシアは聞く耳を持たない。ゴルバチョフが開いた民主化路線はみるみるしぼみ、プーチン・ロシアはソ連時代の強権政治へ先祖返りしつつある
▼「経済協力を餌に北方領上の返還を実現しよう」との政府の対話路線は行き詰まっている。「軍事力」を背景とする外交ができない日本としては、正面から「法と正義」を盾に、国際世論を喚起して「北方4島」返還要求に踏み切るべきだ。 (澤 英武)

(週刊「世界と日本」10月16日1733号)
 IMF改革の一環、出資金調整の中で、出資増加組4力国の一角にトルコが入った。やや奇異の親もある
▼トルコといえば20世紀はじめからの親日国、1983年以降も安倍晋太郎外相や三笠宮崇仁親王以下、多くの閣僚が訪れている
▼近年の経済成長は著しく、政治的安定に加えて大胆なデノミでインフレも終息し、アジアと西欧の結節点として注目を集めている。名目GNP3000億ドル(1人当たり5000ドル)は安定的な中進国といえる
▼トルコ経済の強みは、ある程度自立可能なこと。風光明媚、環境に恵まれ、地勢学的、歴史的遺産の豊富さでサービスを中心に展開し、各地からの観光客が絶えない。とにかくキレイで美しい
▼興味深いのは、イスラム教国でありながら政教分離策が徹底し、西側のレッキとした一員。すでにEU加盟交渉も進展しつつあり、ユーロの世界に入ることになる
▼しかしその実現にはなお障害がある。人口7000万はEU内では大国、イスラムヘの疑念と警戒心も強い。トルコ国民もEU加盟で歴史と伝統の維持に抵抗もある。(高野 邦彦)


(週刊「世界と日本」10月9日1732号)
へルシンキで開かれたアジア欧州首脳会議の閉幕に当たっての小泉首相の内外記者会見を、NHKの生中継(日本時間9月12日未明)で見た
▼首相の靖国神社参拝が原因で行き詰まっている日中・日韓関係をどう修復するか、との質問に小泉首相は、日中・日韓関係、そしてアジア全般との関係は経済協力、文化交流などかつてないほどよい、閣僚級会談も正常に行われている、ただ、意見の相違が一つあるだけで、中韓両国が日本との首脳会談を拒否している、日本はいつでも会談の用意がある、どっちがおかしい? と逆に問い返した
▼そのうえ、両国は首脳会談を拒否していることを侮やんでいるのではないか、と駄目押しまでした。小泉会見には中韓両国記者も参加していたはず。この正面きっての反撃は、退陣直前でなく、もっと早くすればよかった
▼会議の公式ホームページに、小泉首相と温家宝中国首相が笑顔で握手している写真が掲載された。議長国のフィンランド政府に、中国政府から同国カメラマンが撮影した写真を掲載して欲しい、と要請してきたものだという。(澤 英武)

(週刊「世界と日本」10月2日1731号)
日本経済は力強く回復し、長期上昇過程にあるという
▼それにしては、成長年1〜2%という数字は低すぎはしないか。設備投資や生産統計からみても、税収の好調さからも、もう少し高目になるのではないか。奇妙な事は、消費増加が鈍いことである。卸売業界は好調なのに小売業で低迷が著しい
▼これについて、直販やネット販売の好調さが消費統計に反映されていないとの指摘がある
▼基本的な国勢調査でも不完全さが目立つ。社会の変化・意識の変化が、従来型の統計手法ではとらえにくくなっている。それでも日本の統計はまだ「誤差」の範囲で許容できる
▼これに対しおよそ現実離れと指摘されるのが中国の統計。例の軍事費が政府発表よりも実際は相当に多額といわれる。GDPですら、過大ではないかとの指摘が米国学者から出されている。エネルギーや資源利用量と合わないというのがその根拠。が考えてみれば、中国における統計数字は、歴史観と同様、「中国共産党に奉仕する」べきもの。党の正当性をいかに守り主張するか、という運命にある。 (高野邦彦)

(週刊「世界と日本」8月21・28日1726号)
マレーシアで7月28日に開かれた、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の26ヵ国閣僚会議は、北朝鮮に@ミサイル発射の凍結A6ヵ国協議への無条件復帰を求める議長声明を発表
▼北朝鮮代表の白南淳外相はARFからの脱退まで示唆して反発したが、頼りの中国や韓国からも見放され、孤立無援で帰国した。議長声明は国連安全保障理事会での北朝鮮非難決議を踏襲するもので、そのいずれにも日本が推進役を果たしてきた
▼ARFでは南北朝鮮と日米中露による非公式6ヵ国協議案も浮上、中国の李肇星外相が北朝鮮代表の説得に当たったが拒否され、中国はメンツを失う。代わって、北を除く5ヵ国にカナダなどを加えた10ヵ国会議となるが、核・ミサイル・拉致3セットで攻めた日米が大勢をりードし、北朝鮮融和派の中露韓の3カ国を守勢に追いやった
▼小泉首相の靖国神社参拝が日本のアジア外交を孤立させている、との批判があるが、事実は逆で、孤立しているのは北朝鮮をかばう中露韓3国であることをARF会議が示している。(澤 英武)

(週刊「世界と日本」8月14日1725号)
7月4日の中央各紙朝刊をみて驚いた。6紙のうち朝日、毎日、産経3紙がサッカー中田英寿選手の引退を1面トップで扱っていた。なんで中田が1面トップなのか
▼気の毒だが彼はジダン(仏)、ロナウド(ブラジル)のような世界的大選手ではない。近年彼の所属する英プレミアリーグでは補欠に近い扱い。来期は正選手としては契約しないといわれていたそうだ。それでも過去に世界でー、二を争う名選手だったのならともかく欧州では、やっとレギュラーだった時期があったに過ぎない
▼さすがに読売、日経、東京は1面トップにはしなかった。それにしてもW杯では実力もない日本チームを、“ベスト16に入れる”“勝てる、勝てる”と大騒ぎして世論をあおったテレビ、新聞。その挙げ句が中田選手の1面トップだ
▼ニュースの価値判断が全く狂っている。それとも裏に何か意図的なものがあったのだろうか。こんなマスメディアによって世論が引っぱっていかれるようだと、このさき日本はどうなってしまうのか。本当に心配だ。(清宮龍)

(週刊「世界と日本」8月7日1724号)
日本経済は長期デフレから抜け出した。政府見通し、日銀短観もそう確信している。来年度の物価が今年度を上回る上昇に、また、実質成長率、名目成長率とも今年度を上回りそうというのがその根拠
▼名目が実質を超えていれば、さらにデフレ克服論を後押しする。しかし来年度の名目と実質の差は微妙。この差が日銀の政策転換を促し、政府の骨太方針の指針あるいは前提になっている。日本の景気が安定的に回復し、長期好況にあるのは確かだが、政策の大転換を実施するほど、名目が実質を上回るのだろうか。逆戻りするリスクは皆無であるのか
▼当面の懸念は米国経済のミニ・スタグフレーション。米国金利はさらに引き上げられるかどうか。住宅需要の低迷は長引くかどうか。原油価格は安定するか。このリスクは直ちに日本に波及する。朝鮮半島危機、中国経済リスクは、拡大するか沈静化するか。これも日本に微妙に響く
▼いまは慎重な経済運営が求められる時期ではないか。ゼロ金利政策解除は金融正常化のために必要。「改革政策」は地道に進めたい。 (高野 邦彦)

(週刊「世界と日本」7月31日1723号)
 北朝鮮が5日、日本海に7発もの弾道ミサイルを打ち込んだ。うち1発は長距離弾道弾「テポドン2」で、日本列島を飛び越えて、ハワイ沖への着弾を狙ったとの見方もある。幸か不幸か、第1段ロケットが不完全燃焼したらしく、これも日本海の藻屑と消えた
▼日本政府は、北朝鮮貨客船「万景峰号」の日本入港を半年間禁止、軍事転用可能物資の輸出規制強化、チャーター機の乗り入れ禁止など一連の経済制裁を実施。さらに国連安保理に北朝鮮非難制裁決議案を提出した。かつてない機敏な行動である
▼決議案には安保理15ヵ国中、13ヵ国が賛成し、制裁反対が中露2ヵ国のみ。両国は拘束力のない議長声明への格下げを画策しているが、非勢は明らかだ
▼15日からのG8サミットのホスト国ロシアにとっても、北朝鮮への肩入れは難しく、中国のみ孤立色を強めている。主導権を取れる日本政府の外交正念場である
▼政権最後の外遊に忙しい小泉首相に代わって、安倍官房長官の積極行動が目立っている。ポスト小泉の総裁選を前に、絶好の実績作りの場が用意された。(澤 英武)

(週刊「世界と日本」7月24日1722号)
 さき頃、タイのプミポン国王即位60周年を祝う記念式典が首都バンコクで開かれた。これには世界25力国の王室・皇室が招かれたが、タイ王室とは多年親交を結んでこられた天皇、皇后両陛下も出席された。プミポン国王は久し振りのご対面となった両陛下に、とくに気を使われたようで、陛下、皇后、国王、王妃の4方は、なごやかで打ちとけたひとときを過ごされたといわれる
▼この様子は日本でも各紙が報じた。朝日、読売、産経、東京はそれぞれ写真入りで、日経も写真はなかったがきちんと記事にしていた。ところが1紙だけとりあげなかったところがある。毎日新聞である
▼同紙はどういうわけか、ベルギーのフィリップ皇太子がプミポン国王に祝意をのべる場面を写真入り3段で記事にしているが、そのなかで「天皇、皇后両陛下をはじめ、スウェーデンのカール16世グスタフ国王、ヨルダンのアブドラ国王らが招待された」と、記事の最後にふれているだけ。なぜ写真が天皇、皇后陛下でなくベルギーの皇太子なのか−−と筆者は奇異に感じた。 (清宮龍)

(週刊「世界と日本」7月10・17日1721号)
1.25(出生率)ショックを受けて、少子化対策論議が花盛りだ
▼当然といえば当然だろう。がどの対策も無駄とは言えないが、効果はあまり期待できなさそう
▼猪口少子化担当相は、実施可能と思われる手段を動員、財源も考えず、提示してみせた。当然、自民党や内閣でもあまり好評とはいえない。財政当局も財源難と冷ややかだ
▼実際、過去に具体化された対策は少なくない。平成7年ごろからエンゼルプラン(新・旧)がスタート。少子化対策プラスワン(平成15年)、基本法(平成16年)まで作られ、子育て支援、環境整備などが実施された。それでも少子化にハドメがかからなかった
▼なぜか。出産・育児は単に経済的な問題だけではないからだ。森元総理ではないが若者に「カネを積むから子供をもて」といっても今の若者は実行するだろうか
▼根本的な視点が見落とされている。子孫を残し、自身を含めて歴史と伝統を継承させるという観念と意思が希薄になっていることだ。出産と子育ては人生の喜びであって苦痛ではない。この文化が重要だ。  (高野 邦彦)

(週刊「世界と日本」7月3日1720号)
昨年帰国した交流協会台北事務所長(事実上の駐台湾大使)の内田勝久氏が近著で、古巣の外務省の弱腰に苦言を呈している。平成15年12月、台北で天皇誕生日祝賀レセプションが開かれた。日台断交後32年ぶりのこと
▼これに中国政府が抗議、外務省の親中派が翌年以降レセプションを取りやめるべきだとの強硬意見を出す。何とか翌年も開催できたが、外務省は招待する台湾政府要人に厳しい制限を課してきた
▼2年前、森喜朗元総理が台湾を訪問した時、内田氏に、交流協会は送迎を含め一切タッチするなとの訓令がきた
▼同年末、台湾の李登輝元総統とその家族の日本観光旅行がようやく実現したが、これについても、政治家と接触するな、記者会見するな、スピーチするなとがんじがらめの条件をつけた上での入国承認だった
▼日本政府は6日、凍結されていた対中円借款の今年度実施分、約740億円を解除した。5月、カタールでの国際会議の機会に行われた、1年ぶりの日中外相会談に応じてくれたことを評価してだという。上目遣いの外交姿勢が情けない。 (澤 英武)

(週刊「世界と日本」6月26日1719号)
大相撲夏場所でモンゴル出身の白鵬が幕内優勝を果たしたとき、インタビューで「お父さん、お母さんに感謝したい」と語った。おそらくその短い言葉の中に、今日まで育ててくれた父や母に対する万感の思いがこめられているに違いないと、筆者は思っている
▼それを産経抄が「この言葉遣いはおかしい。両親あるいは父と母というのが正しい、いや美しい日本語だ」と書いていた。だが筆者は、異国から来た21歳の若者が優勝したとき、真っ先に両親への感謝を表明したのは素晴らしいことだと思う
▼仮に白鵬と同じ立場になったとき、日本の若者は何というだろうか。多分「お父さん、お母さんに感謝します」という言葉をきくことはないだろう。野球、ゴルフなど他の若いスポーツ選手の言動をみていてもそう思う。言葉が生命のはずのテレビアナウンサー達の言葉遣いもひどい
▼筆者は、日本も自分がなにがしかのことを成就したとき、父母に対し、さらに先輩や同僚に対する感謝を忘れぬ心やさしい社会を、一日も早く再構築する必要があると強く感じている。 (清宮龍)

(週刊「世界と日本」6月19日1718号)
日本の景気は息の長い緩やかな上昇過程に入っている。世界的な追い風に恵まれて、恐らく戦後最長と記録されるだろう。破裂的なバブル化現象も当面見当たらない
▼それでも一部にバランスを欠き、あわやと思わせるリスクも出現する。5月中旬、好調を続けた株式市場で世界的な急落が突如発生し、投資家に冷水を浴びせた。原油高・異常気象が家計に打撃を与え、警戒心を目覚めさせている
▼GDP、物価、消費動向、金融など主要経済指標は、景気がようやく終局場面に入りつつあることを示している。頭をもたげはじめたインフレを押さえつけるべきか。いま少し現状を後押しすべきか−主要国の政策者は悩み続けている
▼市場は政策者の顔色をうかがい、神経戦をくりひろげている。市場の目は、米国の経済政策と中国の経済・軍事動向に集中。警戒感を強めている世界的な資金の流れは、リスクの少ない安全な分野に向かって動きはじめている。リスクの多い開発途上国から、健全な企業の多い先進国への動きである。底流を見誤ってはならない。 (高野邦彦)

(週刊「世界と日本」6月12日1717号)
在日韓国・朝鮮人団体、北系の朝鮮総連と韓国民団が5月17日、和解声明を発表した。6月末、韓国の金大中・前大統領は北朝鮮を再訪して金正日総書記と会談する。慮武鉉大統領は、金大中氏に託して、南北首脳会談の実現を図ろうとしている。そうした慮政権の北傾斜路線が民団・総連の和解を促した
▼そのため、民団側は「脱北者支援」という、北朝鮮がいやがる活動を中止させられた。これには民団の地方組織からも批判の声があがっている。在日両組織の和解は、北傾斜に見えるが、結局は朝鮮総連の弱体化を促すだろう
▼北に拉致されたままの横田めぐみさんの母早紀江さんは訪米してブッシュ大統領と会見、拉致問題解決への全面支援を取り付けた。父の滋氏は韓国を訪問、めぐみさんの夫とされる、これも拉致被害者の金英男さんの母親と面会して、救出への協力を誓い合った
▼韓国マスコミも大きく報道した。拉致に無関心だった韓国世論も変わり始めた。だが、韓国統一相は、北への配慮から、訪韓した日本の拉致家族に会わず、会う必要もない、と冷たい。(澤 英武)


(週刊「世界と日本」6月5日1716号)
昨年秋の衆院選で当選した、いわゆる小泉チルドレンには、「料亭に行ってみたい」の杉村大蔵議員や、党首討論の感想をきかれ「何回も言っている話をコイツも言っているなあ…」と、前原民主党党首(当時)をテレビの前でコイツ呼ばわりした片山さつき氏等、お粗末な人物が多い
▼これは筆者が体験した話。ある夕食会に招かれて行ったら、同じテーブルにチルドレンが2人いた。2人は席につくなり同席した人達に名刺を配ってあいさつした。ところがその中の1人、選挙中メール問題で話題になった某マドンナ議員は、司会者が開会を告げるや否やさっと席を立って帰ってしまった。もう1人は5分ぐらいいただろうか。これもあっという間に姿を消した
▼自分を何様と思っているのか。始まってすぐ退席するのなら出席はことわるのが礼儀だろう。ところで名刺をかわしたマドンナ議員から間もなく政治資金集めパーティーの案内状が送られてきた。名刺を渡したらなりふりかまわずパーティー券を買わせようとする。−品性を疑いたくなる新人議員が多い。(清宮 龍)

(週刊「世界と日本」5月29日合併号・1715号)
“中国からベトナムへ”経済人の関心がシフトしはじめたようだ
▼4月下旬代々木のベトナム大使館で開かれたセミナーは150人をこえる人々で埋めつくされた。「第10回共産党大会後のベトナム経済」が主題。駐日経済参事官は熱っぽく語っていた。近代化と民主化が徐々に進み、経済の国際化も対米・対日関係の緊密化とともに広がりはじめ、今年のAPECごろにはWTO加盟も実現しそう
▼2010年まで平均7〜8%成長を維持し、1人当たりGDP1000ドル達成を目標に“ドイモイ(刷新)”政策を続行する。市場経済と工業化を加速し、後進国からの脱皮を図り、投資環境整備と環境保全にも力を注ぐという
▼党大会ではノン・ドウック・マイン書記長が再任され、14名の政治局員中、新人8名が選ばれて若返りと党内民主化とが一段と実現、南部の勢力が強まるようだ。政治的にも安定度が強まったことが人々を惹き付けはじめたようだ。言論面での自由化が進みはじめているところからみて、中国よりも民主化は早期に実現するのかもしれない。(高野邦彦)

(週刊「世界と日本」5月22日合併号・1714号)
4月20日の米中首脳会談は胡錦涛主席にとって不本意な結果に終わった。形式と儀礼にこだわる中国として、メンツを潰される扱いを受けたからである。これは会談の中身以上の深刻な問題だ
▼初の訪米とあって中国側が国賓訪問を切望したにもかかわらず1ランク下の公式訪問とされたこと。そしてホワイトハウスの庭で行われたブッシュ大統領と並んでの記者会見の場で、記者席から突然、中国の人権弾圧を非難する叫び声があり、屈辱のテレビ画像が世界に流されたこと。またホワイトハウス周辺では中国の宗教弾圧に反対する数千人のデモもあった
▼首脳会談では北朝鮮、イラン、人民元切り上げ、貿易不均衡など懸案の諸問題で米国の要望をかわし、台湾問題では大統領から「台湾独立不支持」を引き出したことなど、胡主席の得点として評価する向きもあるが、会談後が問題だろう
▼中国側は小泉首相の靖国神社参拝自粛を、ブッシュ大統領に言わせようと働きかけていたとされるが、大統領から言及はなかった。中国側の手詰まり感を示すものだろう。(澤 英武)

(週刊「世界と日本」5月8・15日合併号・1713号)
そろそろクールビズの季節がやってくる。去年夏の総選挙で小泉首相は上着をぬぎネクタイをはずし、髪ふり乱して絶叫しながら全国を遊説した。これが大衆に受けて自民党が大勝する一因となった
▼ただクールビズには問題もあった。通勤電車は冷房かきいていて、満員状態ならともかく上着なしでは寒くて困ることが多かった。会合等のあるホテルや夜、食事に行く店も冷房のせいでクールビズだけというわけにはいかなかった。営業などで相手先を訪問する者も上着は必要だった
▼小池環境相は省エネのためにクールビズをという。それならまずエネルギー消費大国アメリカに働きかけるべきだろう。アメリカ人は夏はギンギンになるほど冷房をいれ、冬は半ソデでも暑いくらい暖房している。アメリカが消費するエネルギー源はクールビズぐらいではとても追いつかない
▼小池さんはせっかく環境相になったのだから、日本国内でチマチマやるのもいいが、まずアメリカを説得し、次いで世界の主要先進国を同調させるくらいの省工ネ外交を展関してほしい。 (清宮龍)(週刊「世界と日本」5月1日・1712号)
毎春1度開催される日台の研究者によるシンポジウム。今回は33回を数えるが、主題は当然、中国の異常な膨脹戦略をいかに理解し受けとめ、対応するかにあった
▼会議の議論もさることながら、今回は台湾社会のある一面に大変意味をもち感心もした。ひとことでいえば、“台湾社会、台湾人のやさしさ”である。よく指摘されることだが、公共交通機関や公共の場で、高齢者・身障者など、いわゆる社命的弱者と言われる人々への“さりげない思いやり”だ。かつては日本にもあった。台湾のそれは日本時代の名残り、と片づけるわけにはいかないようだ
▼台湾には日本では影が薄くなった家族主義や思想、そして宗教観などが、台湾独得の形で息づいている。服装や行動では日台青年の間にさほどの差はない。しかしこの点では決定的に違う
▼日本がこうした美風を取りもどすとしたら多分数十年かかるだろうし、取りもどせないかもしれない
▼何よりも戦後身につけた「自己中心主義」は、自由化の中でますます増殖し、社会から安全とやさしさを奪ったから。 (高野邦彦)(週刊「世界と日本」4月24日・1711号)
中国の胡錦涛主席は3月31日、訪中した日中友好7団体代表と会談、「日本の指導者が『A級戦犯』を祀る靖国神社参拝をやめるのなら、いつでも首脳会談を行う用意がある」と述べた。この高飛車発言に対し訪中団長の橋本龍太郎元首相は、「率直に受け止める」と低姿勢だった
▼いわゆるA級戦犯14人が合祀されたのは昭和53年10月。翌年4月、大平首相の靖国神社参拝を報じた朝日新聞は夕刊3段の地味な扱いで、その解説も、憲法の政教分離原則に抵触するかどうかだけを論じており、「A級戦犯合祀」は問題にしていない
▼以後、春秋の例大祭、8月15日の終戦記念日と大平、鈴木、中曽根歴代首相が参拝を繰り返してきたが、「A級戦犯合祀」はマスコミの関心外。その間、中国もまた無関心だったのだ
▼中国の国民感情まで持ち出して、A級戦犯が合祀されている靖国神社への首相参拝を理由に、今、日中首脳会談を拒否するという。「それならなぜ、28年前、A級戦犯の合祀が明らかにされた当時、中国は無関心・無反応だったのか」。橋本元首相に逆襲して欲しかった。(澤 英武)(週刊「世界と日本」4月17日・1710号)
先般、『週刊新潮』が昭和31年の創刊以来50年になるというので記念号を出した。昭和34年には『週刊文春』が発刊され、そのあと中央公論も週刊誌を出した(のち廃刊)
▼当時、毎日新聞のサンデー毎日編集部にいた親しい友人がこう言っていた。「いまはわれわれ新聞社系の週刊誌が優位にいるが、そのうち彼らにやられる。なぜなら新聞社の週刊誌は主としてその新聞の記者を中心につくっているが、雑誌系は各所聞社のもっとも優秀な記者を使っている。情報量も内容もそれだけ充実したものになり、残念だけど近いうちにいまの優劣は逆転するだろう」。友人の言うように、間もなく新聞社系の週刊誌は雑誌系の後塵を拝するようになり現在に至っている
▼さて我田引水で恐縮だが、内外ニュース『世界と日本』はその雑誌系週刊誌のさらに上を行き、日本でもっとも卓越したそれぞれの分野の専門家の寄稿による紙(誌)面づくりを心掛けてきた。ハイレベルな読者に読んでいただき、健全な世論形成に寄与したいというのがわれわれの願いだ。(清宮 龍)(4月10日・1709号)